第25章 断章 呪具女子!
「……伏黒くんは前から先輩と知り合いなの?」
「いや、俺は入学前に少し顔合わせしたくらいだから、そこまで話したことはなかった。ただ、今の2年が1年だった頃に五条先生が担任だったから、話はたまに聞いてた」
「私、入学した日に五条先生から真希先輩も呪具使いだから、いろいろ教わるといいよって言われてたんだけど……正直、レベルが違いすぎて、鬼切持っても全然歯が立たない気がして……」
なずなは自信なさげに肩を落としている。
「だったら尚更見てもらった方がいいだろ。五条先生は元々呪具を使わねぇし、普段忙しくてあんま教えてくれねぇから」
「で、でも、レベルが低すぎてそもそも教えるに値しない……ってことにならないかな?あと、弱すぎて失望される、とか……そもそも先輩に真剣を向けるのって大丈夫なの!?」
頭を抱えるなずなに伏黒は苦笑する。
「心配しすぎだ。乙骨先輩も禪院先輩に体術、剣術を見てもらってたらしいけど、渡辺はその頃の自分より動けてるって言ってたぞ」
「お、乙骨先輩って、特級術師の!?そ、そんな雲の上の人が、わ、私なんかにそんなことを!?」
伏黒が伝えたのは嘘偽りなく本当のことだが、なんだかより恐縮させてしまったような気がして、心の中で少し謝った。
結局、なぜ乙骨が真希となずなの手合わせを見ていたのかには一切触れられず、寮に辿り着き、先輩を待たせてはいけないと鬼切を持ってグラウンドへ直行する。
そして結果は、最初こそ真希が様子見だったから打ち合えていたものの、その後流れるような動きで鬼切を取り上げられてしまい、なずなは術式も虚しく手も足も出なかった。