第25章 断章 呪具女子!
「……御三家ね、確かにあんま気にすることないと思うよ。真希はそういうのじゃないけど、なずながそんな態度だとつけ上がりそうな連中が多いからね」
「ど、どんな態度ですか……?」
「だから、そういうオドオドした態度だよ。古臭い慣習大好きな奴ばっかりだからさ、『私は渡辺家の次期当主なんだぞ、この鬼切が目に入らぬか〜!』ってもっとどーんと構えてなくちゃ」
「ぇ、と……」
大仰な仕草をしている五条についていけないなずな。
ポカンとする彼女に五条は指で丸を作って見せる。
「つまるところ、あんま構えなくても大丈夫ってこと。なんなら予行練習も済んでるし」
「ぇ……?」
予行練習?
全然心当たりがない。
「恵も禪院家の血を引いてるからね。普段恵と話してるでしょ?予行練習はバッチリ」
「えぇっ!?」
「ちょーっと訳ありで僕が後見人ってことになってるけど、父親が禪院家の人間なの。持ってる術式も禪院家相伝の術式だよ」
そのちょっと訳ありで禪院家に売り飛ばされそうになっていたことは、別になずなは知らなくてもいい話だ。
一方なずなは、判明した新事実に度肝を抜かれていた。
男性優位の呪術界で、父親が禪院家なのになぜ苗字が禪院でないのかなんて疑問はすっかり抜け落ちていた。
ふ、伏黒くんも禪院家の人だった……?
しかも、五条先生が後見人ということは、五条家とも関係があるということで……
私、そうとは知らずに入学初日から今まで毎日……いや、それ以上の頻度で迷惑かけてた!?
毎日教室に行く途中で迷子、お昼に食堂に辿り着けずに迷子、寮に帰るのにも迷子……
さっきだって助けてもらった。
初めての課外授業の時に道に迷ったら電話してくれていい、連絡しない方が迷惑という言葉にものすごく甘えていたのでは?
と、というか、私の周り、御三家の人多すぎじゃない!?
あわわと慌て出したなずなを見ている五条の口元はニンマリと笑っている。
これが教師のやることかと痺れを切らした伏黒が口を挟んだ。
「五条先生、あまり渡辺のことからかわないでください!……渡辺も気にすんなよ、これまで通りでいいからな」
「えっと……でもっ……」
「俺はもう禪院家とは関係ねぇし、いきなりオマエに畏まられても居心地悪ぃしな」