• テキストサイズ

妖刀使いの臆病呪術師【呪術廻戦】

第25章 断章 呪具女子!




『伏黒くん、た、助けてください……!』


午後の授業が始まる少し前、電話口から聞こえてきたなずなの声は申し訳なさそうに萎んでいく。




伏黒となずなが呪術高専に入学して約1週間。

連日にわたってなずなからのヘルプコールが止まない。


朝、教室に辿り着けないのは大前提として、教室からグラウンドに出るにも学生寮に帰るにも途中で絶対に迷子になってしまう。


最初はここの結界の影響で迷っているのだと特に気にしていなかったが、1週間覚えられないところを見ると、さすがに彼女の方にも問題があると考えざるを得ない。



口から出そうになったため息を飲み込み、伏黒は宥めるように少しゆっくり話し出す。


「今度はどこで迷ったんだ?」

『えっと……ど、どこかも分からなくて……』

「周りに目印は?近くの教室とか」

『……あの……その……』


伏黒の問いかけになずなは言い淀んでいる。


連日助けを求めていることに申し訳なさと遠慮があるのかと思っていると、続いて聞こえてきた言葉に伏黒はスマホを落としそうになった。


『……ぃ、今、森の中で……』

「……は?」


森の中……?

教室に行こうとして、なんで森に?


理解を超えた状況に伏黒の頭はなぜという疑問で埋め尽くされる。


教室があるのは本校舎。
高専の中で一番規模の大きな建物だ。

構内を歩いていて本校舎を見失うことはまずないし、万が一建物の角度の関係などで見失ったとしても、森に入る手前でおかしいことに気づくはず。


森に入ってから迷ったことに気づく……ということが果たしてあるのか?



いや、と思考を切り替えるように頭を振る。


どうして迷ったか考えるのは後でいい。
今は彼女を見つけてやらねば。


森の中だと目印になるような場所が少ない。
その場に留まるように言って玉犬で探すのが早いだろう。


「今から探しに行くから、そこから動くなよ」

『あ、ありがとう……でも迷惑かけちゃうよね、ごめんね……』


伏黒は電話を切り、玉犬を呼び出すと、森に向かうべく席を立った。



/ 1228ページ  
スマホ、携帯も対応しています
当サイトの夢小説は、お手元のスマートフォンや携帯電話でも読むことが可能です。
アドレスはそのまま

http://dream-novel.jp

スマホ、携帯も対応しています!QRコード

©dream-novel.jp