• テキストサイズ

妖刀使いの臆病呪術師【呪術廻戦】

第23章 本領



11月16日 15:00―


「伊地知さん、本当に私の代わりに結界に……やっぱり私、自分で……」

真希に先導され、東京第1結界に向かう津美紀が申し訳なさそうに眉を寄せると、伊地知は安心させるように笑いかけた。

「いえ、あまり結界外の術師を減らすのも得策とは思えませんから」


真希が津美紀を迎えに行き、死滅回游からの離脱ルールを追加できたことを明かした際、誰が身代わりとして回游に参加するかまでは決めていなかったが、真っ先に伊地知が名乗り出たのだ。

真希も伊地知が身代わりになることに疑問があり、

「なんか……死刑囚と司法取引みたいなことはできないんですか?」

「はは、できなくはないですが時間が足りません。津美紀さんの宣誓期限の19日以内にこの状況まで持ち込めたのは奇跡です。私がもたつく訳にはいかない」

正規の手続きを踏むとしたら圧倒的に時間が足りず、かといって死刑囚を攫うなんてことをすれば政府や行政との関係にヒビが入る。

「新田さんがいますから、補助監督回りの業務も問題ありません。それに……」



「こう見えて、学生時代は術師志望だったんですよ」

「え゛」

真希は思わず足を止めて振り向いた。

今の伊地知からは想像もつかない。


驚く真希に苦笑を返し、伊地知は補助監督の道へ進路を変えた学生時代の出来事を思い出す。



『オマエ、術師やめろ。クソの役にも立たねぇから』


ある日、2つ上の先輩である五条に頼まれたコーラを渡した直後にいきなりそう言われた。

ふざけていることも多い人だったが、今回は表情や声色から冗談の類いではないと分かった。

真実、呪術師に向いていないと告げられたのだと。


『今すぐ普通免許取ってこい。MTな』


その時はなんてデリカシーのない人だ思い、目尻に涙が滲んだものだ。





「……と同時に救われたとも思いました。五条さんがああ言ってくれなかったら、中途半端な術師になってすぐ死んでいたでしょうね」



/ 1101ページ  
スマホ、携帯も対応しています
当サイトの夢小説は、お手元のスマートフォンや携帯電話でも読むことが可能です。
アドレスはそのまま

http://dream-novel.jp

スマホ、携帯も対応しています!QRコード

©dream-novel.jp