第7章 エピローグ
今こうやって結婚出来たことは嬉しいけれど、4年半前にいきなりプロポーズじゃなくて、前もって気持ちを伝えてくれてたら、楠本の陰謀にも巻き込まれず、もっと早く幸せを手に入れられたかもしれないのに、と思っていたのだ。
サプライズが大好きなのはわかるけど……。
「ねぇ、前から聞きたかったことあるんだけど」
「なーにー?」
「なんで4年半前、プロポーズの前にひとこと気持ちを伝えてくれなかったの?」
「え? そんな前のこと? ……うーん、ああー、言いたくない」
「なんでよ、それで私も混乱してしまったんだから」
「じゃあ聞くけど、なんで未亜は僕に告らなかったの?」
「え? ……あー、あぁ、う、言いたくない」
「なんだよそれ、未亜はさぁ、僕がどんなことにも傷つかない心臓に毛が生えたような奴だと思ってる? もし、振られたらって可能性を考えないと思ってる? しかも自分から別れておいて、もう一回付き合ってってどんだけ言いにくいと思ってんの」
「悟も不安だったってこと?」
「そうだって言ったじゃん」
「そっか、私だけじゃなかったんだ」
どんな時でも余裕たっぷりで、特級呪霊に突然襲われても、街でアンケート取られたんだよね、くらいの顔してる最強呪術師が、自分と同じような理由で動けなかったのかと思うと、未亜はちょっとおかしかった。
と同時にそんな悟がものすごく愛しくてたまらなかった。
未亜は隣にいる悟の肩にことんと首を傾けた。今日という日は人生に一度しかない。最後に感謝の思いを悟に伝えたくなった。
「1日だけの婚礼式だったけど私とっても幸せだった。一生忘れない。ありがとう悟、気持ちよく寝れそう」
「おいおい! 寝るって何? これから3日3晩、いや7日7晩でもいいかな? 婚礼の儀は続くよ」
「はい?」
悟は未亜がもたれている肩をずらして顔をのぞき込んできた。相変わらず綺麗なブルーの瞳である。
「君の中で領域展開しなきゃ」
「なにドン引きするようなこと言っ、て、、んんっっ……んあっ」
唇を急速に塞がれた。
そのまま未亜はひょいと軽く身体を抱えられると寝室まで運ばれて、幾度となく悟の愛を受け、全く眠れない朝を迎えたのだった。
完