第2章 元カレ
五条と未亜も連絡先を交換してから、微妙な関係が続いていた。五条は本当に忙しいと言いながらも、何度かLINEや電話をよこし、未亜と会う時間を取っていた。
それには、未亜が祓った特級仮想怨霊の聞き取りをしなくてはいけないから、という理由があるのだが、2人で話をしていると、彼のペースでどんどん話が脱線し、気づけば最近飲んだずんだ餅シェークが美味かっただの、映画に出てくる怪物が本物の呪霊みたいできっしょいなど、どうでもいい話になり、結局、じゃあ、また今度、という事になる。
回を重ねるうちに、店のランクが上がっていってるのは気のせいだろうか? 未亜は少し気がひけていた。
銀座の老舗のお寿司屋さん。
東京湾の夜景が見渡せるホテルのレストラン。
予約3ヶ月待ちの隠れ家的なビストロ。
まるでこれはデートじゃないかという場所に、五条は未亜を連れて行く。しかも呪術師は稼げるの知ってるでしょと割り勘にもしてくれない。
再会したあの日は懐かしくて、いろんな思いが溢れたけれど、これが日常的になってくると、五条のペースに巻き込まれることに警戒心がわいてくる。
別に付き合っているわけではない、五条の事は好きではない、と自分に言い聞かせる。五条悟は最強だけどバカだから、一緒にいると楽しい気がするだけだ。何か言っておかないと、どこか引っ張られそうで、自己暗示をかけるようにつぶやいた。
だが、そんな五条だからこそ会話がおかしな方向へと向かい、結果として、未亜にとって最悪の事態へと転がってしまうこととなった。