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【呪術廻戦】-12年目の真実-

第1章 再会


――2013年6月下旬――
 東京都立呪術高等専門学校を卒業してから4年の月日が流れていた。

 激しく人が行き交う雑踏の中、一条未亜は待ち合わせの場所に向かって歩いていた。予想外の蒸し暑さにハンカチでそっと鼻の頭を拭う。

 まだ湿り気を含んだ空気がかすかに残る梅雨の終わりがけ、この日は久しぶりに太陽が顔を出し、午後には初夏を思わせる強い日差しに変わっていた。

 ガードレールを挟んだ側道には、歩くよりも遅い車の列が出来ており、行き場をなくした排気ガスのにおいが、もわっと辺りに立ち込めている。

 ――なんか呪霊の匂いみたい。それらを吸い込まないようにハンカチで顔を覆い、未亜は黙々と目的地へと向かった。

「早く着きすぎちゃったかな」

 広場の時計を見上げると待ち合わせの時刻より15分ほど早かった。ふぅー、軽く額の汗をぬぐいながら息を整える。

 初めて会う人との待ち合わせは、いつだって緊張を伴うものだ。広場の中央まで足を運ぶと緩いS字型のベンチに腰掛けた。

 後5分かぁ、手にハンカチを握りしめ、落ち着かなくて足先をクロスした。そのままじっとつま先を見つめ、未亜は静かにその時を待つ。

 しばらくするとひとりの人物が足元で止まった。少し足を開いた独特の立ち姿だ。上体をこちらに傾けたのか大きな影が体を覆った。

「久しぶりだねぇ……」

 その声に耳がピクッとなる。
真上から降りてきた声は、思いがけない聞き覚えのある声だった。まさ、かね、一度は脳内で否定したが、この呪力量は間違いない。顔を上に向けるのと同時にその名前をつぶやいた。

「さと、る?」
「元気そうじゃん」
 笑みを浮かべて五条悟は立っていた。

 サングラスに初夏の光が反射して、目を合わせるときらっと眩しい。そのサングラスにわずかにかかる白い髪は、さらっとしていてまるで蒸し暑さを感じさせない。

 鎖骨が見えそうな黒のサマーニットはブランドものだろうか? ラフデザインなのに、絶妙な品の良さがある。同色系のブラックデニムに相性のよさそうな白のスニーカーを合わせた彼は、さながらパリコレモデルのようだった。
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