第3章 鯨
『歌とか歌ったりする?トレーニング中聞いたりとか…』
ファインダー越しに美青年を見つめながら
シャッターを切る。
とにかく私の思う美少年・美青年を、純粋に美しく撮る。
ただし微量のエロいニュアンスもいれて。
私なりの、あくまでもほんのりとしたエロ。
彼らの職業やイメージに差し支えのない程度に。
そんな企画を某雑誌で連載し始めて今回が7回目。
ちょうど他の仕事でイタリアへ行く予定があったので
兼ねてからお会いしたい、一度そのお姿を拝みたいと思っていた
影山飛雄くんに声をかけてみた。
今現在セリエAで活躍する影山くんの存在を初めて知ったのは、
私が美大に通っていた頃。 22歳だったから… 4年前。
影山くんは19歳でオリンピックに出場していた。
しっかり試合を見ていたわけではないけど、
時折目に入るその短い時間だけでも、私を魅了するには十分な美貌を持ち合わせていた。
23歳になった影山くんは今も相変わらず、美しい。
撮影のオファーをした際、絶対に断られると思っていた。
なんというか、彼はありとあらゆるそういうことに
全く頓着がなさそうな印象があるから。
2020年。
本当は今年オリンピック開催だったのだけど…
なんか色々あって来年に。
影山くんからは、とにかくバレー一筋、という印象を受ける。
撮影に入る前には会話をほとんどしないようにしてる。
緊張するならすればいい。
硬くなるならなればいい。
その緊張が、硬さが解れる瞬間も撮りたいのだ。
だってエロいんだもん、その瞬間、その表情。
初めてのセックスをしてるような感じ。
だんだん緊張が解けていって、またちょっと高まって、
それからふっと力が抜けるとき。
たまらなく、セクシーだと思う。
だからこの企画では、
名前、それからよろしくとありがとうだけを伝えてすぐに撮影にはいり、
会話はシャッターを切りながらしていく。