第2章 玉ねぎ
『食べたくなかったらどうしたらいいの』
「んー、捨てる?」
『捨てたくなかったらどうすればいいの』
「食べる」
『食べたらなくなる。 食べたらもういらないってことなの?』
これにYESと答えるのはどうするのが正解なの
「だから何回食べても、また作るって言ってるじゃ〜ん」
それは何回断られても、何回でもって意味なの?
一度も断りたくない
『受け取りたい気持ちを示すにはどうしたらいいの』
「えっ!?そんなこと聞いてないよ、俺」
『…よくわかんない』
「りさ子が妖怪の子産む前に、渡しておこうと思っただけだよ〜」
『…だからよくわかんない』
「あれ? 伝わってない? 転がってない? あっれーおかしいなぁ」
『伝わってる、ばか』
「ブヒャヒャ ばかって言われた〜」
『………』
「俺は勝手にりさ子からこぼれ落ちて転がってるもの拾い集めて勝手にオッケーだと思ってた!」
『………』
「だから、受け取りたい気持ちなんて今聞いてないよ〜 もう知ってる〜」
『………』
もぉ、よくわかんないけど。
よくわかんないけど、食べればいいんだよね。
食べたって、何度でも作ってくれるんだもんね。
なにこれ元気輪にアラザンが埋め込まれてるし、今気付いた。
「ね、だから食べて食べてー どうやって食べる? パクって指ごと?」
それは流石に品がないから…
リングにそっと歯を立てて指から外れるようにして、
一思いに全部口に入れてしまう。
「ふふーん 食べたね?食べたね? もう知らないよー?」
何その子供っぽい脅迫。
『もういいから、はい、仕事に戻って』
「はーい じゃあそうするー」
『うん』
「ねぇねぇ、最後にもう一つ」
『なに?』
「キッチン以外にはどこに転がってるの?その、愛ってやつ」
『それは… 』
屋根裏とか、屋根裏とか、屋根裏とか。
愛っていうのは至る所に転がってる、
うちの屋根裏とか
屋根裏って店とか
そこで食べれる屋根裏ってケーキとか、
それからうちの屋根裏で一緒に寝てる妖怪の周りとかに、それはもう。
所狭しと。
fin