第8章 空
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「なんかりさ子綺麗になったな!」
「あら、リエーフもそう思う〜?私も今日会ったら絶対聞こうと思ってたの」
あれから2ヶ月が経った。
遠距離とはいえ国内。
私と信介さんは2週間に一度は、どちらかが出向いて会うことを続けてる。
その、恋人同士として、というか… まぁそんな感じで。
仕事がいそがしく、なかなか現場の被ることのなかった灰羽姉弟と今、
久しぶりに会って、食事をしている。
「何があったの?」
「恋、してるのかなぁ〜?」
「えっ、恋してるの!誰々!俺の知ってる人??」
「きゃー、あのメイクの人とか? ほら、美羽ちゃんと入る現場には大体いる…」
「あの人は女性には興味ないはずだけど」
「うっそー!ほんとぉ? 全然わからなかった〜」
………。
つくづく仲のいい姉弟ですこと。
それで、私に何を聞こうとしたって?
「なんか高嶺の花感がいい意味で崩れたって、この間一緒だったカメラの人が言ってた」
「あぁ〜 わかる〜 てへぺろっじゃないけどそんな感じ?」
「んー…、てへぺろっは違うけど、持ってるオーラはそのままに、でも親しみやすさみたいなの?出たって」
『…笑』
「何笑ってんのさ! 俺はあの人が言ってたことを言っただけじゃん!」
『違う違う、そういう笑いじゃない』
灰羽姉弟はどっちがツッコミとかない。
ただただ、もうずっとあのままで会話が進む。
でも時折、どちらからぴしゃっと正気に戻るというか、
真っ当なことを言ったり、落ち着いた口ぶりで話したり、
あとは真意をついたようなことを言ったりするのだけど。
その様子は、いつ何度見ても、笑ってしまうのだ。
『恋人ができた』
「え!誰々!俺の知ってる人!?」
「んーと、じゃあね〜…」
『アリサ、その流れはもういい。笑
リエーフは知ってはいそうだけど、まぁ、知らないに分類していい気がする』