第6章 迷子
あーーー疲れた。
はじめての一人旅。
アルゼンチン。
荷物はMYSTERYRANCHの40ℓのバックパックと
マーチンのバックパッカーズギター。
パタゴニアのウエストポーチ。
パタゴニアにトレッキングに行ってきた。
氷河をみたり、国立公園をトレッキングしたり。
ゆったりと2週間ちょっと、パタゴニアのあちこちを探索し、
今日、ウシュアイアの空港からブエノスアイレスに到着。
山歩きはもともとすきだった。
だから、それ自体は全然。問題ない。楽しい!
ただやっぱり、はじめての一人旅。
アルゼンチンは治安は比較的良いとはいえ中南米の空気。
それから、移動の度に肩にのしかかる荷物の重さ。
これでも結構軽くしたのに。
背負ってるうちにぐいぐいとのめり込んでくる。
…それに、非常に眠い。
結局迷子には、なれなかった。
迷子ってなろうとしてもなれないのかな。
あー眠い眠い。
ね む い……
・
・
・
「お〜い お〜い ほーんとによく寝ちゃってるねぇ」
どこかから日本語が聞こえる。
「って言うか本当に日本人なのかなぁ?
アジア系ってだけで日本語で話しかけられるのとか嫌な子もいそうだよねぇ…」
パチリ。
目を開けると、綺麗な顔立ちをした男性の顔。
すっごい近くにある。
その手は私のこめかみをそっと撫でて…
『えっ! はっ!?』
バックパックを抱えて枕にしたまま、
食堂で座りながら寝てしまってたらしい。
そこまではわかる。
移動疲れして、お腹も満たされて眠気がピークになったんだ。
でもこの人誰!?
なぞに綺麗な顔してるし、妙に爽やかだし、
髪サラサラだし、いい匂いする。
でもどこか胡散臭いっていうか、なんていうか、
鼻から信じようとは思わない感じ。
チャラそうで、運動もそつなくできるんだろうけど、
好んでいっぱい身体を動かすとかはしなさそう。
…なんかだいぶ、怪しく見えてきた。
とっさに机の上の水の入ったグラスに手を伸ばす。