Lapis Lazuli 瑠璃色の愛 ~初恋と宝石Ⅵ 気象系
第62章 翔禾姫の戦い
そして気が付くと。
ふと障子戸の方を見ると、和也様の気配が、確認出来て……
天井裏を気付かれぬよう見れば、智殿が確認出来た……
雅若様を、横目で見ると。
(お可哀想に
緊張しているのか。いつもは健康的で。紅く染めた頬をされているのに。青白い顔色をされていて。
しかし、お小さいながらもキッと外喜に 鋭い視線を向けておられる。
「さて。 腹を割って話したいと思いましてね。 今、饅頭とお茶を用意させますゆえ」
その時、外喜の弾んだ声音が聞こえて来た……
(腹が煮え繰りかえるっ)
腹が煮え繰りかえって、仕方なかったけど。だからこそ無表情で外喜を見つめてやった。
私は心の中で。 怒りに任せて部屋を飛び出して来た。私の行動の裏で。
和也様。智殿。おばば様。おじじ様達が、 こんな短時間の間に、何かしらの指示を 発信し受け取って。 動いて下さっているのだと……
潤兄上は、なずなを助ける為だろう。 ここには姿が無くて。
ありがたくて
軽率な自分の行動が恥ずかしかった。けど今は、私と雅若様の為に 動いてくれている人達の想いを無駄にしない為、 動きを見極めて。
(自分のすべき事をするのよ)
ゆずなは一人分の茶を立てている。
そして。おゆりは、音を立てぬよう慎重に。 帯び紐に付けていた巾着を外すと…… 茶壺の中の粉茶を茶ベラにて袋の中に入れて……
( 粉茶を巾着に入れるのは智殿の指示よね……)
次に竹筒と……竹筒のような入り口の穴が狭い物に入れやすいようにか。一ヶ所三角に尖らせた、変わった形の柄杓みたいな物を取り出すと……
(日頃持ち歩いてる竹筒……私も持ってる……巾着も)
竹筒に、残っていた 水分を素早く火鉢に捨てたおゆり。
瞬間、 暖められた水が ジュっと…… 一瞬動きを止めた、おゆりとゆずな……
「 茶はまだか!?」
後ろを振り返る事なく、二人に声を荒げた外喜……
「 はい。ただいま。申し訳ございません」
謝りながら小刻みに震えているおゆりを気遣ってか、ゆずなが柄杓を取ると、おゆりが竹筒を抑えて。
(可哀相に震えて……)
竹筒に茶釜より、湯を移し蓋をしてしっかりと帯に結わえ付けたおゆり。