Lapis Lazuli 瑠璃色の愛 ~初恋と宝石Ⅵ 気象系
第62章 翔禾姫の戦い
翔禾視点
部屋で雅若様と、過ごしていた。
穏やかな日でありながら、何か……説明しがたい空気がただよう日……
(なずな?)
席を外しているなずなの帰りが遅いのが気になる……
そんな時。
『外喜殿より、お茶を振る舞いたく。三の丸の屋敷へ……来られたし。 との事にごさいます。私が案内させて頂きますゆえ』
外喜……(悪いがもう敬称略)よりの、お茶の誘い……
(来られたし?)
言葉使いを知らないのか?
そなたは、純梨の方の叔父であり、櫻井家を仕切る立場にいるやも知れぬが……一家臣であろう?
お茶の誘いに、何の意味、目的があるのか……六年前と同じ出口……その為になずなに何かを仕掛けたのだとしたら?
続けて、おばば様とおじじ様の部屋より聞こえて来た。ボヤ騒ぎの知らせ。
知らず、身体を強張らせていた。雅若様がお小さい左手で私の右手をギュッと……
気が付いたら立ち上がっていたの。智殿の制止を聞かず三の丸の外喜の屋敷に向かって……
客間を目指す途中。玄関先。廊下。居室前……監視や見張りに止められる事無く。私は、何の労力も使わずに客間にたどり着く事が出来てしまった。
音を立てぬよう慎重に障子戸を開けて。
(外喜はまだのようね)
中の様子の状況判断をする。
客間の奥の上座に座布団が一枚……手前の下座、座布団が二枚……
お茶道具は下座(から見て)の。
(右斜め後ろかぁ)
そんな後を思っていると。雅若様が下座向かい、 座布団を持ち上げると、おもむろに上座の座布団の隣に敷いて……
「ふふ」
私は思わず笑ってしまったの。だって、六歳の 小さな子供でも分かる事が。
(大の大人が分からないのっ?)
何食わぬ顔をして雅若様と上座に座り、外喜を迎え撃とうと……
て。 ゆずなとおゆりが部屋に入って来て。二人は、 緊張した面持ちで下座の後ろ、 茶道具の前に座って。
と同時に、外喜が。
上座側の襖を開け…… 背中に感じる 一瞬動きを止めた外喜の気配が。
下座に着いた外喜。 苦虫を潰したような顔から、ニヤニヤとした顔を私達に見せて来て。
(不愉快だわ……)