Lapis Lazuli 瑠璃色の愛 ~初恋と宝石Ⅵ 気象系
第59章 束の間の……
(なずなっ)
私は、必死に西櫓に向かって走って!
(……)
西櫓に着いて……
「伸びてる……」
私は思わず呟いてた。
(智は何を仕掛けたんだ?)
まぁ、見た感じ分かってしまったんだが……後で聞く事にして。
それより今は!
案の定と言うか当たり前だが扉には鍵掛かっている。細い棒を、腰にぶら下げている巾着袋から取り出すと。
-ガチャガチャ-
本来は、 簡単に解除されてはいけない場所な訳で。素人には難しいコツが……
結構、時間が掛かってしまって焦って。ガチャガチャやっていると……ふと中から聞こえた物音。
(なずなか?)
考えたくないがっ、中で、なずなが危険な目に遭わされてるのかっ?
というより……扉の方に向かって来てる?
「は、早く!」
-ガチャ-
ようやくの手応えがして。 はやる気持ちが抑えられなくて、 用心深く開けなければならないのだろうけど …… 引く力に思わず力が入って…… 錆びついた扉は。結果中々開かなくて……
開いた瞬間、足元に……何かが ……イヤ、人が転がり出て来て……
「きゃぁ」
思わず身構えたけど…… 悲鳴をあげた後そのまま。うずくたったまま動かなくなった……って。
(なずなっ?)
なずな……可哀相に……お役に立つ所か。敵方に捕まって。迷惑を掛けた……とか……悔しさとか。情けなさ……とかで。地面にうずくまり動けなくなってるのだろう? 敵方には、涙を見せたくないのに涙が溢れるのだろう?
震えているなずな。
「なずなっ! 大丈夫かっ!?」
俺の声に上体起こしたなずな。
驚きすぎたのか、固まってしまったなずなを。安心させてあげたくて 抱き寄せると。
「遅くなってすまなかった。無事で良かった……なずな……」
「ひっ、ワーッ」
堪えていたものを、吐き出すように大声で泣き出したなずな。
儚なげで、守ってあげたいなずな。可愛くて愛しくて。
泣き止んだ後の第一声が。
「翔禾姫様と、雅若様の元に参ります!」
だった。
私も翔禾姫、雅若、和也、智。早く、皆の助っ人に行きたいしで。