Lapis Lazuli 瑠璃色の愛 ~初恋と宝石Ⅵ 気象系
第58章 なずなの戦い
-西櫓-
「う、ん」
目を開けて飛び込んできたのは、視界不良な空間で。
(ここはどこかしら)
不覚にも、みぞおちに拳を食らって、私意識を失って…… どこかに運ばれた?
(あまり楽観視出来るような状況や、場所じゃないみたいね)
少し暗闇に目が慣れて来たから、どこに 閉じ込められたのかと確かめようと目を凝らすと。
使い古した剣や兜などが転がっている……
(櫓のどこか?)
油断して捕まってしまった、自分の愚かしさに涙が出そうになってしまって……
「泣いている場合じゃないでしょ!」
早く翔禾姫様と雅若様の御傍に戻らなくては!そう思い直して、溢れて来た涙を慌てて拭おうとして気が付いた。
(両手足、縛られている……見張り……いない?)
「縄抜け……」
(逃げなきゃ!)
幼き頃より翔禾姫様と稽古に勤しむ中、身に付けた技の一つ縄抜け……
ふと、縄抜けの稽古をしながら。
(縄抜けって、覚える必要あるのかしら?)
思った事もあったけど……
(馬鹿な感慨に浸ってる場合じゃないわ!)
「結んだ人下手くそなのね……弛いわ」
稽古の時は様々な結び方で、 結び方はもっときっちりだったもの。
簡単に解けそうって思ってしまった……
「外れない!」
後ろ手に縛られた腕。焦ってた……力任せに解こうと……
後から思い返すと。きっとその時の私は、冷静じゃなかったのかもしれない。
「そうよ!力任せに解こうとしても却って……落ち着くのよ!」
動きを小さくして……体を揺らして ……縄を緩めて……
(外れた!)
腕が自由になったなら足は簡単。
「痛いっ!」
気が張っていた為気付かなかったのか。左足に触れた瞬間、凄い痛みが走ったの。
さっき男背負い投げした時に捻ったかもしれない。
少し熱をもって腫れているのが分かる。
それでも、痛みで涙目になりながら。何とか縄を外すと私は、這って出口に向かって。