Lapis Lazuli 瑠璃色の愛 ~初恋と宝石Ⅵ 気象系
第57章 言語道断!
-本丸御殿中央 政務の間-
-その頃の和也.潤-
(外喜め! 会議に遅れるなど言語道断!)
和也と潤は、イライラしていた。
『殿様は、*四半刻《しはんとき》遅れます。『申し訳ない』との事にございます』
使者よりの口上があったばかり。
殿様が、家臣に謝っているのだ。
一家臣である外喜が、姿を現さないなど……
(随分と慢心したもんだな…… 御領主様気取りか。腹立たしい!)
(本当ですね。しかし、 高くなった鼻をへし折って差し上げる日も近うございますゆえ……)
外喜に対し我慢の限界の二人は、 言葉に遠慮がない。
(後もう少しだ!)
それだからこそ。まだ我慢の余地があるというもので……
しかし…… どこかザワついているような……
家臣団が、緊張状態で待っている為だろうか。 張り詰めた空気の中。些細な物音も必要以上に大きく聞こえるのかもしれない。
その手の訓練で、鍛えられている二人ならば、尚更の事。
(北と東側?)
翔禾姫と雅若。翔希の方様に、殿様の……おわす……方向?
和也と、潤が顔色を変えた瞬間。
『ただいま、東櫓付近よりボヤ騒ぎが発生致しました! 潤様と和也様に指示をお願いしたく! 外喜様より!』
居間の前方の襖が開き、口上した男。
その時……
-スッ-
和也と、潤が座る最後尾。後ろの障子戸が空いて……紙ずれの音が……
気配が……
(智殿? ではない……)
(智か? じゃない……)
他の家臣達はザワ付いていて、気づいてない様子……和也は慎重に後ろ手で 背後に置かれた紙を取り開くと。潤と二人で。
《雅の夢 東の空へ 吹き翔んだ 時の彼方へ 涙で見送る》
《なずな咲く 西庭悲し 涙雨》
*四半刻=三十分