Lapis Lazuli 瑠璃色の愛 ~初恋と宝石Ⅵ 気象系
第54章 背負い投げ
外喜殿といた所を見た事がある男達。
恐らくこの男たちの目的は……
(どうしたら…… 痩せた男の方なら……)
おめおめと捕まる訳にはいかない!
「はい。ありがとうございます」
なずなが答えると。
《おや、引っ掛かった》
というように、口角を微かに上げて笑った男達。
(なずなにはそう見えたのだ)
なずなは、ゆっくりと痩せてる男の方に近付き……
(身体を低くして……懐に飛び込んで……)
己に近付いて来たなずなの動きに、 一瞬時間が止まった 反応してこない。 それは大男の方も……
(右手で着物の前襟を掴み、左手で右手を掴んで……足を払って……)
覚悟を決めて。動きを反芻《はんすう》しながら、なずなは男の懐に飛び込んで。
「えいやぁっ!」
-ダンっ!-
護身術で習った……決まった……
想定外の事でか、受け身を取れずに投げ技を食らった為か。うめきながら身動き出来ないようだ。
しかし、相手は一人ではなかった……
「やるじゃねぇか」
素で言い放った大男。
なずなは、華奢な体格であり、渾身の力で一人を倒したのだった。息の上がったなずな……
(もう、力は出ない……)
万事休す……
「おい!」
大男の呼び掛けに、どこに潜んでいたのか。見張り役であろうか? もう一人男が。
投げ技を決めた後、自身も床にへたり込み動けなくなったなずな。
大男に、みぞおちに拳を入れられ。もう一人の男に抱えられてしまった。
「……の、しきちかくが……に……はこ……るぞ!」
なずなは薄れる意識の中、大男の言葉を聞いていた。
(ひめさま、わかさま、じゅんさま……おゆるし……ください)
翔禾姫様と雅若様をお守り出来なかった……
なずなの瞳から涙が、スーッと流れ落ちた……