Lapis Lazuli 瑠璃色の愛 ~初恋と宝石Ⅵ 気象系
第54章 背負い投げ
-その頃のなずな-
-本丸 北御殿近く-
朝食後より、お腹の調子が悪いなずな。
(翔禾姫様と雅若様をお守りする人間として、体調管理を怠るなんて情けない)
厠より急ぎ、翔禾姫と雅若の元へ戻りながら、なずなは、情けなさに涙が溢れそうだった。
(泣いてる場合じゃないわ)
なずなは、 自分に喝を入れながらふと思った。
朝食後から痛み出したお腹……
いつも通り、朝の、翔禾姫と雅若の起床前に、台所脇の使用人が食事を摂る部屋にて食べて……
(食べ物かお茶に何か入れられた?)
だとしたら何の為に? なずなは考える。
(私を翔禾姫様と雅若様から遠ざける為?)
今日のこの時、潤様に、和也様は外喜殿と共に家臣団の会議に出ていると思っていた。
今この時、何にかしらの策を弄して、翔禾姫様と雅若様が危険な目に合わされていたら……
(油断していた!)
(いえ、智様がお傍に付いていて下さるはずだもの……翔禾姫様と雅若様のお傍を離れる際には、お二人の過ごしておられる部屋の。隣の部屋の襖の絵を修正されていたもの)
そう思い直して、歩みを早めようとした瞬間。
「ようやく見つけた」
急ぐなずなの後ろから、そんな声が聞こえて来て。
恐る恐る振り返ると。
「翔禾姫様が、秘密裏の話があるゆえ。居間とは別の所にて話がしたい。あなた様に伝えるよう。仰せつかりました。案内《あない》致しますので付いて来て頂きたい」
いつもの使い番とは違う男。 しかも二人。
平均的な体格の男と、縦と横両方大柄の男。
使い番にはあり得ない。最初の言葉掛けがぞんざいだった男。
人の容貌など、とやかく言うのは良くないけれど。 口元は、笑みを浮かべているのに。 目は笑っていない男達。
(翔禾姫様と雅若様のお傍を離れてから、何時が立っているのだろう……)
早くお傍に戻りたい……