Lapis Lazuli 瑠璃色の愛 ~初恋と宝石Ⅵ 気象系
第52章 親の愛
数日後
-翔希の方.陽の部屋-
「誠で……ごさいますか?」
涙で瞳を潤ませながら、自分を見つめてくる翔希の方。瞳の潤んでいく 陽。
「はい……誠です」
爽も、瞳を潤ませ頷き言葉を返す。
(己の想いの為に、翔禾姫を。雅若を。潤を。そして義父母を涙させて……)
「なぜ……そのような……私にだけは……」
「そなたの意図した事は何だ?」
母親として、なぜ。どうして? 感情が溢れ出すのも娘への深き愛。
努めて冷静でいよう。と。真実を見極めようとするのも、父親の娘への深き愛。
堪えきれずに涙する、 翔希の方の方の背中を擦りながら、涙している陽様の胸には、どんな想いが溢れ出しているのだろう?
「翔菜の方の『もう……翔禾姫と、雅若を……大人の都合に巻き込みたく無い』という想い。潤への想い。子供達が成人してから外喜を……と。願った気持ちを叶える為に、私は何をすべきか考えました。今お話した事を伏せる事で、お義母上様とお義父上様が外喜に『いつの日か……』と強い意思で相対し、暴走を止めていて下さると考えました」
(私の想いは伝わるだろうか?)
「そうか……"事実"を知っていたら『いつまでも……外喜。お前の好きにはさせないぞ』その想いに綻びが生じて悟られるかも知れない……そういう事だな」
(さすがお義父上様……)
「はい……お義母上様。黙っていて申し訳ありませんでした」
どんな理由があろうとも。 自分だけは話して欲しかった…… 翔希の方の想いが痛いほど伝わって来て。爽は心が痛かった。
「爽……翔禾姫と、雅若。潤にも伝えたと申しましたね?」
そう呟き、涙に濡れた瞳を拭い。顔を上げた翔希の方の表情は、母親の顔では無く。和智翔ノ国を櫻井家を背負って生きて来た女性の顔であった。
「はい」
「子供達が立ち上がったという事は、外喜が動き出すやもしれぬ。ゆえに、翔禾姫。雅若。潤。に危険が迫っている。それを阻止する為に和也と智。なずなも。動き出す。そして、外喜に印籠を渡す最後の機会であるという事ですね?」
「はい」
(さすが…… 翔希の方……)
爽は 、瞬時に悟られた翔希の方に感嘆し。 ますます、尊敬の念を深めるのだった。