Lapis Lazuli 瑠璃色の愛 ~初恋と宝石Ⅵ 気象系
第44章 幸せの国で……
「母上様……翔禾姫の傍に付いていてあげて下さいませんか?……純梨の方……潤を連れ、母上と一緒に……雅若の面倒を頼みたい……」
「はい……かしこまりました」
翔禾姫……こちらに向かう前、動揺した姿を見せてしまった……
敏感な翔禾姫は、何かを察したのだろう。
「私もまいります!」
母の所に 一緒に連れてって下さい。というように、泣き出した翔禾姫……
(許しておくれ翔禾姫……)
現実を受け止められないまま、 薬師の背中を見つめていた 爽。
「殿様、翔菜の方様がお呼びです」
「翔菜様? 良かったご無事で……」
涙に濡れた、顔にて翔菜の方に声を掛けると。
「こずえは、何も……咎め無いように……純梨の方も預かり知らぬ事です……」
(こんな時でも、ご自分の事より、他の者達の心配ですか……)
翔菜姫様らしいと、思いつつ。
「分かっております。外喜は見つけ次第……」
「外喜殿は、子供達に手を掛けないと約束致しました」
「翔菜姫様?」
「もう……翔禾姫と、雅若を……大人の都合に巻き込みたく無いと……好きにしたら良いと、外喜殿に申してしまいました。元は、松本家も櫻井家の……潤様が統治しても構わないのです。私は……成人するまで……外喜殿に……子供達が成人してから……」
「外喜の毒牙から守りつつ、力を付けさせて。得意になっている奴より、取り戻そう?ですね?」
「……ふふ」
「翔菜姫様?大丈夫でございますか?」
爽は、話の出来るの翔菜方に、安堵していたのだけど……
(まるで、気力を振り絞り、言葉を残されようとしているような……)
「翔菜姫様!お、お気を確かに……」
急激に襲って来た恐怖……
「翔禾姫を。雅若を。爽様を。潤様を。純梨の方も、守れたのなら……和也と、智の事にも、 気を配ってあげて下さいませね。こずえは今まで通りに……基史殿に良く謝って下さいませ……」
そこまで言うと涙を溢れさせた、翔菜の方。
「爽様と、翔禾姫、雅若と…… 何も煩わしい事の無い。幸せの国で暮らしとうございます……」
綺麗な微笑みを浮かべた翔菜姫は……
「翔菜姫様っ、しっかりなさいませ!爽を一人になど…… ずっと一緒にして下さいませ!」
城内に爽の嘆きが響き渡ったのだった……