Lapis Lazuli 瑠璃色の愛 ~初恋と宝石Ⅵ 気象系
第44章 幸せの国で……
障子戸を開けて、爽が見たものは……
自分の身体の左隣に、寝かせた雅若が大泣きしているのを、なだめようとしているのだろうか?
うつ伏せの体勢にて寄り添いながら、左手を雅若の胸元に軽く乗せ……
「翔菜様っ、翔菜姫様っ」
爽は、静かに、そっと。翔菜の方を上向きにすると……
翔菜の方の両頬に涙が……スッっと伝わって……
翔菜の方が、 爽の声に反応してくれたように…… 爽には感じられて……
しかし、静かに目を閉じた翔菜の方……
「翔菜姫様?」
恐る恐る確認。かろうじて……息をされている。
「薬師を呼べ!」
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しばらくして。
「殿様、薬師が参られました」
使い番の者の先触れに。
「薬師……?」
「爽殿。貴方様が指示なされたではありませんか……気を確かに……」
共に、翔菜の方の部屋に来た、爽の母の早月が答える。
その瞳には涙が溢れている。
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一方、部屋に戻って来た純梨の方の見たものは……
腹心の持女達に、箝口令《かんこうれい》を敷くと、殿に知らせるべく、使いを出し。部屋の片隅にいる、こずえを隣の間に……と指示し。又、家族への使いも割り振ると……
「申し訳ございませんっ。翔菜の方様っ」
涙の止まらぬ、純梨の方。
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