Lapis Lazuli 瑠璃色の愛 ~初恋と宝石Ⅵ 気象系
第42章 お茶の誘い
-翔菜の方の部屋-
「失礼致します。 翔菜の方様。今よろしいですか?」
雅若をあやしていた翔菜の方は。
「 ええ大丈夫よ」
障子戸の外から声を掛けて来た 、乳母の早月に答えると。
「 純梨の方様付きの侍女のこずえが、お伝えしたき事があると参っております」
「こずえが? 分かりました。部屋に入ってもらってちょうだい」
翔菜の方は少し訝りながら、 返事を返した。
翔菜の方も、こずえの事は知っていて、庭師の基史の娘で。気立ても良いので。出来れば私付持女にしたかったくらいだわ。そう思い、残念がっているのであった。
緊張した面持ちで部屋に入り、障子戸の近くに座ったこずえに。
「 そんなに緊張しなくても良いのよ。こずえ? どうしました? 純梨の方に何かあったのですか?」
わざわざ、 自分の所来たのは……
(純梨の方に何かあったんじゃ?)
そう考えるに至り、慌ててこずえに問い返すと。
「いえ。 純梨のお方様におかれましては、体調崩されてるという事はございません。『雅若君様と共にお菓子など頂きながらお茶を致しましませんか? と お誘いしたい』と申されまして。翔菜のお方様の返事を。都合を聞きに参ったのでございます」
珍しい事があるものだ……と翔菜の方は正直思った。 正室である自分から、お茶の誘いをした事はあるが……純梨の方からは初めてだ。 それに、 雅若と一緒にと……
しかし翔菜の方はすぐに思い直した。純梨の方。いつも 自分の立場を誇示たりせず控えめなの方。 幼き頃からの関係せいの為であろうか? 時に爽に対して、 遠慮なく物を言ってしまう自分。純梨の方の柔らかい雰囲気に、爽は 癒されているのではないか? と思うのだ。
(そうね。ゆっくり 話をしてみたいわ)
翔菜の方は、そう思い至ると。
「 こずえ、支度が出来次第、純梨の方様の部屋に参りますのでと。先に戻ってお伝えてして下さい」
「かしこまりました」
こずえはそう返事をすると部屋を出て行った。