Lapis Lazuli 瑠璃色の愛 ~初恋と宝石Ⅵ 気象系
第41章 暗雲
-ドスドス-
荒々しく、足音をたてながら、場内の執務室に向かい歩き出していた外喜。
後ろから衣擦れの音……?
(曲者っ?)
勢い良く振り返った先。
使用済みのお茶道具を手にした持女……
(驚かせおって……ん?この娘。純梨の方の部屋にいた……)
持女は、持女で驚いていた。 目の前を歩いていた人物に急に立ち止まられ。それも眼光鋭く睨まれているのだから。
「そなた名は?」
「は、はい。大野こずえと申します」
「大野?」
その名前に、 引っかかりを覚えた外喜。
大野という苗字で思い当たる人物はただ一人……
「大野基史の娘か?」
「はい」
基史は、翔菜の方に近しい……二宮勇と懇意の人物。
「ふーん……父親に私を……純梨の方や、潤若を見張るように言われたか?」
「え?」
こずえには、外喜の言葉の意味が分からなかった。
櫻井家に、奉公に出たいと夢を見た少女。確かに、父が庭師として仕えている縁もあって、奉公に上がる事を許された面もあるやも知れないけれど……
雇う際の、針仕事や、洗濯に炊事能力などの試験も受けているし。純梨の方より『持女として仕えて欲しい』と、打診されたのだ。
こずえには、父の基史がお庭番的な仕事をもしているなど、知らなかったのである。
「そ、そのような事はありません」
(父が疑われている?)
父を守りたくて。こずえは必死に否定して。
そんな、こずえを見つめながら。
「こずえと申したな。使いを頼まれてくれぬか
?」
外喜は、こずえにそう言うと……