Lapis Lazuli 瑠璃色の愛 ~初恋と宝石Ⅵ 気象系
第41章 暗雲
人は、夢を抱く。思い描いた未来を生きる人は稀《まれ》。いつしか人は夢に折り合いを付け、今置かれた場所で、もがきながら生きて行く……
(ふんっ、なんと愚かなっ姪だっ)
松本外喜は、荒々しく純梨の方の部屋の障子戸を締めて、心の中で毒づいた。
『叔父上様、叔父上様の思い描いておられる事が松本家の総意であるならば。潤様の益になるのなら、協力も致します。しかし、櫻井家の統治にほとんどの家臣も。和智翔ノ国の民達も不満など抱いてはいないのですよ?』
「小娘が……こしゃくな……松本家の統治で満足している兄の瑠喜など論外!十年前、翔菜の方と爽に代替わりし。翔禾姫が誕生日した際に『機を逃すな!』と『櫻井家に替わり、松本家で和智翔ノ国を治めるぞ!』声高に叫んでいた奴らも……櫻井家の家臣達と反目するので精一杯で役に立たぬし!」
翔希の方と陽の力と支え、家臣達の支えにより、若さゆえ統治能力を不安視されていた、翔菜の方と爽が成長して行き、櫻家の安定が図られつつあるのに。外喜と、一部の家臣がそこに気付かない……
争い事など、力で勝った物こそが人を支配出来る。その価値観の中でしか生きられない……己の存在価値を見出だせない。それが外喜という人物であった。