第29章 親心……切なる願い２

「翔菜姫の縁談についてです。翔菜姫の願いが。『私の運命を、受け入れます。 ただ一つわがままを許されるのならば……私が私お慕いするお方と…… 夫婦になってよろしゅうございまか？』 だったのです」

（翔菜姫様に……縁談……？）

　爽は動揺が隠せなかった。

「なぜそれを私に……」

　聞かせるのですか？　いつかこの日が来ると覚悟はしていたけれど……

　言葉にならない想い。

「ですから。翔菜姫の想い人が、貴方なのですよ。爽」

（……え？）

翔希の方様に続いて。

「翔菜姫の願いを叶えてやりたいと思いながら親として。*出自《しゅつじ》を……相手を知らねばと翔菜姫に訪ねたのだ。『二宮爽です』と答えが返って来たのだよ」

　殿様が仰せられたのだが、爽は驚きで声が出なくなってしまって。

「翔菜姫を信じてます。けど、出自の明らかな殿方でないと…… そう考えて尋ねたのですが…… 貴方なら…… どうか翔菜姫の願いを叶えてやってはくれませんか？」

翔希の方様のお言葉を繰り返す。

『～どうか翔菜姫の願いを叶えてやってはくれませんか？』

　幼い時からお慕いして来た翔菜姫様。

「近々翔菜姫より正式な申し込みが……」

「 失礼の段申し訳ございません。どうか私から 縁談の申し込みをさせて下さいませんか？」


あまりの幸せに爽は泣きたかった。



叶わぬ想いなのだ……翔菜姫様の事は諦めなければ……と。

苦しくて。切なかった想いが……


(諦めるなんて出来ない!)

しかし……

男として…… 女性から。愛する人から縁談の申し込みをさせるなど……

翔菜姫様を幸せにして差し上げたい。 想いを打ち明け。己から縁談の申し込みをして差し上げたい……

(翔菜姫様。幸せに致します)

*出自 《生まれ 出身 家柄》