Lapis Lazuli 瑠璃色の愛 ~初恋と宝石Ⅵ 気象系
第26章 お慕いする方と……
「お母上様、お父上様……」
「な、なんです?」
だいぶ長い時を、思い巡らせるように黙りこくっていた翔菜姫に急に話しかけられて、返事を返したの翔希の方と陽の声は裏返ってしまった。
「私の運命を、受け入れます。 ただ一つわがままを許されるのならば……私が私のお慕いするお方と…… 夫婦になってよろしゅうございますか?」
口調は、キッパリと。けれども不安に瞳を揺らしながら翔菜姫が、母と父に問い掛けると。
「ええ、良いですよ」
なんとなく、翔菜姫の思う人を瞼に思い浮かべながら。母の翔希の方は即答し、その言葉に父の陽も深く頷き返した。
その瞬間、翔菜姫は、綺麗な大きな瞳から大粒の涙を溢すと。
「ありがとうございます。お母上様。お父上様…… 」
と。
──
一月《ひとつき》後、神無月
これからの事、様々な事に覚悟を決め、気持ちを整理するまで一月……
翔菜姫は使いの者に、使いを頼むと、深く深呼吸を繰り返し、心を落ち着かせる。
しばらくして、先触れにて。
「まもなくお着きになられます」
報告がもたらされた。
(どうか……)
「お着きになられました」
跳ね上がる心音……
「……どうぞ」
翔菜姫には、努めて冷静に答えるだけで精一杯だった。
「失礼致します」
「お呼び立てして 申し訳ございません。爽様」
「何です? 改まった呼び名は? いつも通りに呼んで下さいませ。翔菜姫様」
緊張し過ぎて、ともすれば倒れそうな自分とは裏腹に。そんな事を言いながら上座に座る自分の前、下座に腰を下ろした爽。
おかげで緊張が削がれた翔菜姫だった
「ふふ、爽に無理難題を了承して頂きたくてつい」
翔菜姫は、花がほころぶように綺麗な微笑みを浮かべ。
しかし、震える声で……
「あの……」
言い掛けたのだが。
「あの……」声音を震わせながら……爽は。
「翔菜姫様。この、二宮爽と生涯を共にして下さいませんか?」
翔菜姫に想いを告げたのだった。
(え?)