Lapis Lazuli 瑠璃色の愛 ~初恋と宝石Ⅵ 気象系
第21章 皆で守り合うのですよ1
智side
「翔禾姫…… そのようにお嘆きにならないで下さい」
「なぜ……」
いつもは穏やかに美しき微笑まれている翔禾姫なのに……今日は涙されるお顔しか……
(貴女様には笑っていて頂きたいのに……)
「確かに。我が大野家では六年前の出来事により、私の姉のこずえを亡くしました」
「智殿……」
そう呟いた後、お着物の袖口より綺麗な刺繍が施された布を取り出された翔禾姫は、目頭を押さえて……そんな翔禾姫のお背中に左手を添えて軽く撫でておられる和也様。
和也様は翔禾姫のお従兄《いとこ》……近しい間柄のお二人。絵師である私……和也様の話を聞いておられる時涙されている翔禾姫の涙を拭って差し上げたいと。お背中を擦って差し上げたいと何度思った事か…… チクリとした胸の痛みを押し殺し。
「十六で、櫻井家に針子として奉公に上がる事が決まって喜んでいた姉が。働きを認められ、純梨の方様付きの持女になった姉が……」
「ひっ」
ピンと張り詰めた空気の中、小さく堪えきれず涙声をあげられた翔禾姫。
「ごめんなさい。智殿。続けて下さい」
「はい……櫻井家では事件により、翔禾菜の方様が亡くなられた。深く関わったのは松本家である。ほとんどの家臣が認識していたと同時に、門外不出である。そんな空気に包まれていった」
たまらず言葉をのみ込むと。
「智殿……大丈夫ですか?」
和也様が、心配そうにお声を掛けて下さって。
「失礼致しました。父が真実を調べようにも誰からの情報も得られずに、苦しむ姿を見て。当時十二であった私は、居ても立っても居られずに……父に弟子入りを懇願して必ず自分の手で明らかにすると誓ったのです」
「智殿……ごめんなさい。ごめんなさい……」
(翔禾姫……)