Lapis Lazuli 瑠璃色の愛 ~初恋と宝石Ⅵ 気象系
第88章 爽から智へ
一国の領主が家臣に頭を下げておられる。改まった言葉使いまでされて。
「純梨の方様が姉を直ぐに人目に付かない場所に移して下さり、櫻井家の方々の、姉には……大野家には何の咎も無いと沙汰して下さいました。ですから……」
「しかし、その為に真相を知りたい。と願った基史殿には辛い、何の情報も得られない事態に……早月を初め、翔菜の方に仕えていた持女などを、翔菜の方と共にこの島にこさせたのだ……私が『公』ではなく『私』の事情を優先した為に智のように悲しい思いをする事となった家族がどれだけあるのだろうか……私は最後の務めとして、きちんと調べて謝罪をすると決めたのだ。自己満足と言われても良い。感謝の想いを直接に言いたいから」
「殿様。幼き時より翔禾姫と共に勉学だけでなく、和智翔ノ国の者として生きる心得や必要な事をお教え下さった事感謝しても仕切れません。勇様と父から『殿が、体術や剣術などを学ばせるのは、翔禾姫様や雅若様を守るという、目的以外に。自分自身。智を守る為なのですよ』と教えてくれました。自分の立場、役割は何かを考え、絵師として翔禾姫様と雅若様を見守りながら、諜報活動もする。立ち位置を見つけました。大野の家は事件とは無関係であると。切らずにいて下さり。御庭番の皆も外喜に私が狙われないように守ってくれました。少なくとも、殿様は、私と父には事件後の生きて行く為の保証をして下さいました。ありがとうございました」
「そうか……本当に謝しても仕切れないな。基史にも……」
そう言って涙ぐまれた殿様。
今日は、何回涙される殿様を見ているだろう? この歳まで受けて来たご恩を。生涯忘れずに生きて行こうと誓ったんだ。
「智」
「は、はい」
唐突な呼びかけに驚いでしまって。
「 すまない。驚かせて。智の名前の由来はあるのか?」
(殿様?)
「はい。ございます『周りの人を先導出来る人物』『文学や芸術に関心や才能がある人』になるようにと、 両親が名付けてくれました」
「そうか……芸術の才覚は素晴らしいしな。最後の決定権は智が下す気がするしな。智は……翔禾姫を好いていてくれているのだろう?」