Lapis Lazuli 瑠璃色の愛 ~初恋と宝石Ⅵ 気象系
第72章 上手な翔禾姫1
「智殿も。和也様と同じ。鋭いのね。驚いたわ。けど、そうよね。鋭くなくては人の動きを探る仕事なんて……ね。雅若様をと二人、しばらく穏やかに暮らせたらな。とか思ったのだけど」
鋭いには、誉め言葉や、参ったわね。色々な意味が含まれているようだけど。和也様と同じ。の言葉に、少しイラッとしてしまった……
「 そうですね。よろしいと思いますよ」
けど、それを見せずにお答えすると。
「でも、お父上様や、潤兄上達、智殿や、和也様達には苦労を強いて私だけ……」
「その為に、お助けする為の家臣が。我々がいるのですよ。今、翔禾姫と雅若が疲れているのなら心を休める時なのでは。潤様や殿様が心疲れた時は、翔禾姫と雅若が頑張る。それを、さらに我々がお支えする。それで良いではありませんか」
そう伝えると、大きな綺麗な瞳に涙を浮かべられた翔禾姫。
「ありがとう」
儚げに微笑まれた翔禾姫。
「例えば、何をして過ごされるのですか?」
「そうですね。川遊びかしらね?」
口元に、右手の人差し指を当て答えられた翔禾姫。
「川遊び?」
「うふふ。心配ないわ。雅若様の水泳の鍛練に、お教えしたり、見守るのよ。私は。川には入りませんよ。着物を着てならともかく。人様に見せられない姿をさらして泳いだりしませんよ。ご心配なく!」
カラカラと笑っておられる翔禾姫。
別に、翔禾姫が言われた事を懸念したり、危ないと思ったのではなく、また、楽しそうな事を思いつかれたな。
(お供したい……)
そう、思った訳で……
しかし、翔禾姫が上手でおられた。
この先の事について。翔禾姫が本当の本音を、この時、隠しておられるのを私は、少しの疑念を残しつつも。
はぐらかされてしまっていたんだ。