Lapis Lazuli 瑠璃色の愛 ~初恋と宝石Ⅵ 気象系
第72章 上手な翔禾姫1
-翔禾姫の部屋の隣 控えの間-
「ごめんなさいね智殿。呼び出したりして」
「いえ。仕事も終わりましたしお気になさらないで下さい」
「今、雅若様はご自分の部屋にて持女達と過ごしていますが、私が近くにいない事で不安になられたりしたら……いえ、私が雅若様より離れられないから控えの間で話を……思ったのよね」
(……)
あの決着の日以来、憂いを帯びた表情をされている翔禾姫。雅若は、翔禾姫が意識を失われた日は泣かれたりと情緒不安定気味になられ、舌足らずな話し方をされていたけど。
「賢い子ですからね。私に心配掛けまいとか、色々と……元気に振る舞っているのよね。あの子は」
「そうですね……」
そう。一見、見た目にはお元気に見えるも、潤様や、和也様、私も心に掛かっている事で。もちろん、殿様、純梨の方様、なずな殿や、ゆずな殿も心配していて。
「智殿。ごめんなさいね。湿っぽい空気にして。貴方は……絵師も立派なお仕事よ。誰にでも出来る仕事じゃないもの。外喜が失脚して、ようやくあるべき姿の、櫻井家に戻る時が来たのです。この先、櫻井家を背負って行く潤兄上様の……私と雅若様を裏からだけでなく、表の仕事でも支えて助けて欲しいのです」
(やはりだ……私は。和也様も気が付いておられるのだが。は、櫻井家の事を潤様に任せたいと思われているのでは? と感じていた)
「お支えする場を頂けるなら、力を尽くさせて頂きますが……翔禾姫は、どうされるおつもりですか?」
まどろっこしく、グダグダと考えても、答えが出ないで不安なら……ズバリと聞く事にしたんだ。
(……)
まさか、私がそう返して来るとは……思っておられなかったのだろう。翔禾姫は、大きな瞳を更に見開いて、口も少し開けて……驚いた顔をされている。