Lapis Lazuli 瑠璃色の愛 ~初恋と宝石Ⅵ 気象系
第68章 統治をしている者は誰ぞ
「外喜よ。そなたこそ、己の置かれた状況を分かっていないようだな。少なくとも二つの罪を犯しているというのに」
「何を馬鹿なっ」
いつもお優しいお父上様……微笑まれているけど、瞳は笑ってなくて。
初めて見るお姿。
私達は、固唾を飲んで見守るしかなくて。
「私達が、そなたに掛けている嫌疑の一つは、これから調べねば白黒付かぬがな。外喜よ。なぜ、何の届け出もなく会議をすっぽかしたのだ?」
「誰に向かって物を言ってるのだ!」
「その言葉、そっくり返す! 櫻井家を。和智翔ノ国を統治しているのは誰ぞ!?」
ギリギリと歯ぎしりしている外喜。
「私が、会議を開くと布令を出したのだ。休む理由を届け出るのはそなたの義務ぞ。これから吟味する案件。会議を休んでまで、私的な茶会を開いた理由を明らかにしてもらう。二つ目は、なずなを拉致し西櫓に閉じ込めた。これを罪と呼ばずして何とする?」
真っ赤な顔して、お父上様を睨み付けている外喜。
「私も、これまで『私』を優先したから、責任は取るつもりだ。最後の私の務めとして。そなたの事を徹底追及する。外喜……人の上に立ち、国の統治を行う事を望む者が、下の者を大事にしないでどうする? 今回の件で、見張りや使い番をしていた者達に、こちらに内応するように。と説いたら何人もが応じたぞ。計画や、これまでの事も、少しだが聞き及んでいる。言い逃れは出来ぬぞ。そなたに失望している者達のなんと多い事か……今は、東櫓に留め置いているのだが。外喜は、私達の目の届く、多聞櫓《たもん》にて勾留するとしようかな……なずなを。女性で、しかも子供のなずなを暗い櫓に閉じ込めるなど……言語道断! 覚悟しておけ!」
青ざめて震えている外喜。
(ようやく事の重大さに気が付いたようね)
多聞櫓に連れて行かれる前に……
「外喜……私からも言いたい事があります」
そう伝えて。
項垂れた外喜を冷ややかな目で、見つめておられたお父上様が。
「翔菜姫様……ようやく、約束を一つ果たしました……」
そう呟かれると。瞳にみるみるうちに涙を溢れさせて……
お母上様が、ま四角の形の布に刺繍を施された。大切になされている、四つ折りにした手拭き布を、襟元より取り出されて……
涙を拭われたの。