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Lapis Lazuli 瑠璃色の愛 ~初恋と宝石Ⅵ 気象系

第65章 潤の戦い


 潤の視点

 なずなを背負い、桜城の左側。渡り廊下の先に建つ西櫓から、前方右斜め前の三の丸庭園内に建つ外喜の屋敷に向かいながら。


「見張りがいないな」



 呟いてしまった。

「智か……」

 きっと、智の仲間のお庭番達が暗躍したんだな。

 なずなは多分捻挫をしているし。本丸御殿(桜城の裏にある)に残して行こうと思ったけど。

 一人で気を揉んで待っているなんて無理! 翔禾姫と雅若の所に早く行きたい! 


 その想いが凄い伝わって来て。その気持ちも良く分かるからね。 一緒に行く事にしたんだ。


 だけど一言、言ってやんなくちゃ。


「なずな!『私がいたら鈴様は、 自由に動けないんじゃないか。足手纏いなんじゃ』 なんて事を考えてんだったら、私は怒るからな!」

「……」


 図星か……


「分かるよ。なずなも翔禾姫も、人に甘えるってのが苦手で、何でか自分に自信がなくて。 自己評価が低すぎるんだもん」


「そんな事は……潤様も甘えるのが苦手ではありませんか」


「 甘え下手か……雅若も、和也も。智もだよな。って!」


「皆、って事ですね?」


「うん(笑)。まぁとにかく! 背負い投げをして敵をやっつけたのは誰だ? なずなは役にたってんだよ!」


「はい……」


 なんて……私となずなは、どこかのんびりとした会話をしてたんだ。



 外喜の屋敷の居室の前の、障子戸の前には、部屋の中の様子を伺っている稜弥がいて。一気に緊張感が高まった。なずなも同じ。身体が強張っている。


 出来れば、部屋の中を確認したいと思ったんだ 。と、なずなが極々小さな声で『降ろして下さい』って。


 こういうね。気配りの出来る所が私には…… 好ましいと思う所な訳で。

 悪いけど、お言葉に甘えて。なずなをゆっくりと床に降ろすと。和也が場所を開けてくれて。私は慎重に音を立てないように中を確認した。


 上座に翔禾姫と。雅若。下座に外喜。障子戸の近くに、ゆずなと、おゆり。


(ん? 気配がする)

 天井を見上げると智……

 翔禾姫の右斜め後方の、襖の奥には……

(母上様?)

母上様まで、いらした事に私は動揺してしまって。

饅頭とお茶を目にして、なずなが小刻みに震え出して。私も二重に怖くなって……


(そんな……)




 







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