第19章 アフター・ダンスパーティー
『駄目、声ももちろんだけれど腰とか背骨が床に当たって痛いし集中出来ない。
……それとも悟はさ、奥さんが床に押さえつけられて痛い目に遭う中、ひとりだけ気持ちよくなりたいスパダリなわけ?』
顔を上げた悟。真顔でスペースキャットならぬスペースサトルになってる。感情どこに消えた?サングラスを掛けた状態が良い意味で似合ってるんですけど。
する…っ、と私の腰に回された腕が私を開放し、私も悟の腰から手を下ろし、数歩離れた。ぱっと見た全体図、とっても格好良いはずなのに真顔と股間の見事な勃起…鋭利な角度が彼をシュールな姿にさせてる。
帰って早々に切り替えが早いな……と思わず笑った所で悟は動き出す。黙って少し屈み、浮遊感。私をひょい、と横抱きにした。
『さとるー?』
「スパダリ、奥さんにグッと来た、もう無理。お互い今着てる服はたった今うさちゃんクリーニング行きが決定しました」
『え、マジで着たままやんの!?』
部屋へと進む足。悟にはご機嫌の感情が戻ってる。
「うん。綺麗なラッピングのプレゼントは中身だけじゃなくてちゃんと外側も愛でなきゃいけないだろ?……って事でさ、」
横抱きの私の体がゆさ、と悟が一歩進む度に揺れる。じっと悟の顔を見ていると、進行方向を向いていた真剣な顔が私を向いてにこりと笑う。サングラスの奥の瞳も細められて。
「さっ!会場へと到着しましたよ、プリンセス?」
立ち止まった場所はベッドのある位置。ゆっくりとベッドに私を下ろした悟はサングラスを外してカタ、と小さなテーブルに置き、片手がネクタイを緩めてる。
『せっかくの服がぐちゃぐちゃになるけどそれでもするの?』
「うん…現時点で最高のオマエを頂こうかなって思ってるよ。ハルカが今着てる服なんて何度も着るモンじゃないし、そんなに大事にしなくて良いでしょ」
緩めて、シュル、と音を立てたネクタイは床に落ち、私へと跨って両手で私を逃げないように覆いかぶさってる。
距離も近くてすぐに手が出せる。情事の始まる2秒前、くらいに。