第2章 視界から呪いへの鎹
『……って、向こうが私の番号知らなければ掛かって来ないんじゃ…?』
登録してから気が付いた。しかも私の番号教えてないから、向こうも知らない番号だったら出ないんじゃ……?
それに…何かあったらって何。何か起こること前提?
教師に、マジシャンに相談事って何を相談すれば良いの?私、学生じゃないし、宴会芸に困ってるわけじゃないし。どういう状況で相談するんだ?
連絡先一覧に登録されたばかりの名前と電話番号を見て考えた。出会いから連絡を知るまでとことん変な人。ナンパっていうモンでもないし……いや、ナンパ?ナンパだったの?それはないよね。
画面をスリープモードにしてバッグにしまう。家に帰って夕ご飯だ、今日のご飯はなんだろうなって考えながら日の落ちた帰り道を進んだ。
『ただいまー』
「おう、お帰り……あーあー、かあちゃんに貰った大事な髪そうだにしやがって」
家に帰れば父親が私の髪に文句を言いながら顎で洗面所をしゃくっている。手を洗え、うがいしろって事だ。
『髪を染めようが切ろうが関係ないでしょ、そういう親父…父ちゃんこそ親からもらった大事な髪薄れてんじゃん、サイヤ人の王子かよ』
「俺はベジータか」
『王子さまじゃなくておじさまだけれどねー』
やや乱れ気味のオールバックを撫で付けて静かな父親を見て、手洗いなどを済ませてキッチンに向かう。ちょっとしょんぼりしながら鍋を掻き混ぜていた。
夕飯までに帰って来られた。食器を戸棚から出してキッチンへと運んだ。
「しかし予定よりは早く帰って来たんだな、一緒にメシ食えるから良かったよ」
『ん、そうだね。なんか疲れちゃって。でも、今は疲れ吹っ飛んでるんだよね……』
「父ちゃんに会えたからか?」
『(無視)はい、いただきまーす』
4人掛けのテーブルで私と父で食事を始めた。
シングルファザーってわけじゃない。一人っ子というわけでもない。私には兄がいて、兄は地方に引っ越ししている。仕事の関係もあるけれど、その土地が好きだからそこに家を建てるために貯金中で、アパートに住んでいる。