第16章 覚醒のトリガー
頭に手を乗せられてわしわしと撫でて、悟はずんずんと進んでいく。その背中が広く大きく逞しく…守られている感があって嬉しい反面、愛されている・愛していると思いながらに嫌な感情も湧いてきてる。
強さへの嫉妬や守られてばかりではなく、自分の身は自分で守るって傲慢さ。リベルタのやつらを殺したい気持ちも…こんなにも汚い感情は見せたくなくって心に押し留めておく。
──呪術師に性格の良いやつなんてそうそう居ないよ?激レア。僕だってさ、こんなだもーん。
そう悟は昔言っていて、またいつだかに聞いた事があった…なんの時だっけか。じゃあ私の性格はなんだ、言ってみろって言ったら悟はめんどくさがりだとか変に頑固だとか虚無虚無プリンだとか言いたい放題に言われて舌打ちしたっけか。
ほい、ほーいとか軽い口調で、殴るでもなく手で呪霊や殴り掛かる構成員を張り手するようにあしらって行くけれど、一撃では仕留めきれずにこちらに倒れ込む呪霊。悟の横顔と危ない、と言いたげな口元を見つつ私はその呪霊に手を触れた。変に体温の高いのっぽな呪霊。
それは自分の中で見付けて初めて使う呪術。
しっかりと自身に記憶された中で、イメージするのは私に深く刻まれたトラウマ。
"グギュ、"
呼吸器が血に溺れるような声を喉から漏らし、強靭な肉体に君臨する頭部が滑り落ちて床へとゴト、と音を立てて落ちる。ゆっくりと消えていく呪霊の体。
「ん!……そうこなくっちゃ!」
危ない、と言う前の出来事で、悟の開きかけた口は安堵の笑みへと変わって祖母達の居る前方へと向けられた。
『……へへっ、後ろは気にしないで悟はそのまま進んで!』
にっ!と笑って悟の背を数歩下がった状態で追う。
……悟のふわふわした白髪の後頭部が見える状態になって、体に初めて違和感を感じた。