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【呪術廻戦】白銀の鎹【五条悟】

第16章 覚醒のトリガー


142.

金属の大扉が全開になったその先に飛び出すと、そこはエレベーターを使って二度ほど通った場所だった。

私の経験した嫌な記憶がフラッシュバックする。
捕まえられて自由を奪われ、来客の負傷を回収してはその呪力を奪われる。鵜や働き蜂のようにただ搾取されるだけではなく、仲間を重体にしてはその怪我を回収させ、裏切り者は実験と称して斬り、回復させ続けた。

始めの頃は直にここへと溜めこんだ白髪化した式髪分を吸われに来てた。だんだんと上の階で小型のバッテリーのようなものに変えられてここまで移動する事はなくなったんだけれど…。
呪いが祓われる場面は呪術に目覚めてから何度も経験したけれど、私が触れたままにすぐ側で人間が死ぬ光景は初めてだった。
思い出したくない、忘れたいのにあの血飛沫と倒れ込む首のない胴体を思い出して少し吐き気を催す。
あの時の光景を思い出す、ボスが踏み込んだその大きな空間に居たから…。

敵でありながら大切な人でも無いけれど助けられる命なら助けたかった。でも、死なせてしまった。いや、苦しませ続けてしまった。その生かし続ければよかったのか、治療を一度もせずに見殺しにすれば良かったのか正解のない選択肢の罪悪感。
片手で口を抑えながらに、今の状態を把握しようと悟の側を離れない様にした。
地下空間内全てが見渡せる場所、踏み込んだ私達3人の足は止まる。
リベルタの構成員は私達が合流してもそれを上回る人数。
高専側の術師は少ないものの拮抗した状況。
床や宙を浮遊する呪霊、大きな呪力のタンク付近にはリベルタのボスと人質である攫われたふたり。

見ただけでも混沌としてる状態ですぐに手を出そう!…とはなりそうもない。悟はこんな状況であっは!と笑っていた。

「なるほどね~、これはすぐには手を出せないってワケだ!」
『…笑ってる場合じゃないでしょ』
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