第16章 覚醒のトリガー
そして悟が片手を上げ、ふたりに軽く先に行くよと、声を掛けて走り出す。私もその悟の後に走って着いて行った。
あの時はとても長く感じた建物内での脱出。身体がボロボロだったというのもあるけれど、移動距離が長かった。今は健康体、地下へと下る移動が長く感じる。そしてたくさんの小部屋…構成員達の部屋や実験体となった人などの部屋。
いちいち開けずとも呪力が良く見える悟にとっては様子を把握するのは簡単らしい。
「ふたつ隣の部屋では恵が相手を拘束中だ、僕らはこのまま先に進むよ。
このままの速度で大丈夫?ハルカは身体強化行けるけど龍太郎着いて来られてる?」
「大丈夫です!少々鍛えてはおりますので!」
「それは良かった!このまま地下の方に進むよ!」
私側を気遣い、そして見ながらにアイマスクの奥はきっと龍太郎を見ている。そのまま悟は通路を駆け階段を駆け下り、数段飛んでだんっ!と着地した。
強化してる分なら行けるけれど、と同じく着地し、直ぐ後の龍太郎は駆け下りながら着いてくる。
走りながらに悟がククッ、と笑った。
「傑にちょっと近い呪術を使う呪詛師も逃げ出してて面白い光景になってるな…?それから呪力タンクから小分けにいくつか持ち出そうとしているね。あーあ、組み立て途中だからって放置してるから使われてんだよ、ジジイどもは考えなしなんだから…、」
『ここからそういう状況まで見えんの?』
私がここに捉えられて居た時、エレベーターに乗った事があった。ちんたら乗ってる暇も無いだろうしその分階段を下がっているのだと思うけれど随分と下に行くようで。ずっと下ってばかり居る。
……地上はお客さんとの接点のある場所。表面を出せる場所は何階かあったけれど、地下は2階ほど、そのうちの1階は私が捕らえられていた檻があった所。そしてその更に下はただ階段だけが続いている。きっと階段の隣辺りにはエレベーターも最下層に貫いているんだろうけれど。