第15章 縛りの為の呪物
ぽっこりと腹の出たちょび髭の店員のおじさんがわはは!と笑っている。お土産屋のスタッフでこのままたくさんのお土産を詰め込んだダンボールを宅配業者に依頼してくれるらしい。私の送り状を待っている、という状態で会話をずっと聞いていた。
私が、聞き分けのない子供かよ、全くもう、とぶつぶつと文句を言いながら、野薔薇の物などチョコレート製品って事もあって冷蔵コースで書いていると、手持ち分沙汰の悟がスタッフに絡んでいった。
「僕の奥さんが厳しいんですけどー!」
「あんちゃん達新婚かい?女ってのはそういうモンなんだよ、多少は尻に敷かれてた方が夫婦円満は続くってモンだね~」
「夜は尻どころか組み敷いてるのにねー?」
『悟っ!』
ねー?と男同士で打ち合わせでもしたんか?というくらいに息のあった話し合いを止めさせる。
ええと、この箱で冷蔵コースとなると……、と料金表を見つつ財布を取り出していればスタッフはそれに気付いて宅配料金を指差している。
「まー、僕も時々わがまま言ってさー、尻に敷かれるってか乗ってもらう事もあるよ?『悟っ!』でもさーお土産なんてピン!と来たら買うべきじゃん?おじさん、分かる?うんうん、でっしょー!?
そういう時に限って尻に敷かれるなら相応にさー?
……あー!これは夜に乗って貰うしか無いでしょ!僕のバナナボートに『いい加減にしろ!』ゆっさゆっさ『誰かこいつの猥談止めて!』」
送り状書いとる場合かっ!この夜の事情を昼間に持ってきてる人の口を早く閉じさせなくちゃ…っ!
明らかに顔が熱い、梱包用のガムテープを見付け、こいつで…!という所で。
暴走した悟の話にヒーヒー言いながらおじさんが爆笑しているとその背後から怖い顔をした女性がそのおじさんの肩をぽんっ!と叩いた。瞬間真顔になったおじさんは大きな図体でありながら縮こまり、さくさくと静かに宅配手続きを進行させていく。
多分、奥さんなんだろう。にこ、と笑って去っていく。かっけえな、オイ…。私の母に近いものを感じ、多分若い時にブイブイ言わせていた空気を感じた。
……さて。
『……さーとる君?さっきの暴走についてちょっと話し合おうか?』