第15章 縛りの為の呪物
うーん、と考えながら指先に着いたらしいチョコレートを舐める悟。今度は何を考えているのやら。
夜になった沖縄。きっと明るかったらとても良い景色だろう、明日が楽しみで。窓を下げれば生暖かい風がまるで異国を思わせる香りを運んできていた。今は車内で海が見えないけれど、過ごすプライベートビーチ付きのホテルからは最高の景色が堪能出来るよ、と飛行機内で悟は言っていたし。
……まさかこの後にもとんでもないものを用意してるわけじゃないでしょうね?と若干サービスに怯える状態の私に悟は視線を向けた。
「うん…そうだねえー、明日の夜高級フレンチ予約してたんだけどハルカは無理な感じ?」
『沖縄来てまで!?む、無理無理無理無理…っ!ヤンキー出身の小娘ですので大衆食堂の安いソーキそばとかで充分でございます……チャンプルーも付けて!』
沖縄に来てまでのそれはやりすぎだわ…!せめて、せめて現地の料理を、日本国内をモチーフにした、国を跨がない料理を、ですね…っ!沖縄旅行なんだし…!
目をぱちくりしながら悟は笑った。
「まあ、フレンチなんて東京でも食べられるもんなあ…うん、今回は辞めとくよ、今回は」
えっ…これ私が悪いんか…?そうか…と頷きつつ目の前で明日の断りの電話をする悟を見守る。
回らないお寿司の時からも感じる事はあったけれどやっぱり色々と違うんだな、と最近になって知る事も多い。お家柄の壁。
だからといって頻繁に高級寿司だとかナントカランクのステーキ!っていうわけじゃなく、ジャンクフードも食べるし部屋で駄菓子を食ってる時もあるから未だに悟の全てを知ってるわけじゃないんだけれど。
電話を終えてとても甘そうなトロピカルフルーツのジュースを口にしてる悟は、私の視線に気が付いて微笑んだ。
「ん?なぁに?もう欲求不満なワケ?」
『どうしてそうなった。いや、そういうんじゃないんだけれど…』
雰囲気もあってか、いつもよりも色っぽい視線を送ってくる悟はにこっ!ととても良い、無邪気な笑顔へと変わる。口に出す言葉はその無邪気さとは違う、ただのケダモノだったけれど。
「そう?ちなみに僕は欲求不満です!一昨日生理終わったって報告聞いてからずっと我慢してたんで今晩色々とハルカにぶち撒けます!深夜までたっぷり、トッポのチョコレートの如く!」
『………勘弁して』