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【呪術廻戦】白銀の鎹【五条悟】

第2章 視界から呪いへの鎹


「ほら…耳。真っ赤じゃーん。
じゃあさ…ゆっくりで良いよ。ゆっくり僕に慣れていってそれっぽい恋人を演じていけば。でも、必要とあらば抵抗しないでキスくらいは受け止めて欲しいな。
別に人前でヤるわけじゃないだろうし、それくらいは平気でしょ?」

『なんつーこと口走ってんの…っ!どれもこれも平気なわけがないでしょ!』

ヤる、だなんて。なんてこと口走ってんだ、この人ーっ!
驚いていればははは、と愉快そうに笑っている。

「ああ、そうだ良い事思いついたんだけど、キミが僕に対して"さん"を付けて呼んだ場合、キスするってのはどう?僕の事を悟さんって呼ぶもんね、キミ」
『嫌です』
「よし、"さん"付けたら唇にチューね、了解」
『嫌です』
「はい、今からスタート!」
『嫌っつってんだろ……』

口を尖らせ、フラメンコのように手でパン、パンとスタートの合図を叩く悟は、私の否定する声が聴こえていないようだ。愉快そうにサングラスを掛けて鼻歌をふんふんと歌っている。
私は自分の眉間に指先を当てて、この人に言葉(否定)が通じる方法が無いのか本気で知りたくなった。振り回されっぱなしだ。誰か攻略法を知っている人、居ないだろうか…?

本を拾ってくるりと背を向ける黒尽くめの長身。振り返る事なく、片手をひらひらさせている。
超・余裕全開だった。

「じゃ、よろしこ~!」
『嫌です!』

トットット、と遠ざかる足音と共に、ハッハッハ、と楽しげに去っていく悟。
さんを付けなきゃ良いんだ、さんを付けなきゃ。そ、そんなの簡単な事だ。
両手で自分の頬に触れる。ほかほかと熱っぽく、分かっていたけれど耳に触れればやはり熱い。
その右掌をじっと見る。さっき唇が触れていた手のひら。思い出す、昨日のキスの感覚…──

『~~~っああー、もうっ!』

心を無にしよう、と崩れそうな資料のジェンガを整えた。


****

──来る時は悟がこじ開けた、門の前。今は門が空いた状態で4人が居て、二人ずつが間に空間を置いて向かい合っている。家族であっても私は祖母に対する愛情がこの滞在期間中に湧かなかった、その信用のなさを空間にした様だった(龍太郎は言わずもがな、犯されそうになったし)。
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