第2章 視界から呪いへの鎹
助けては言おうとした、助けを求めてたから。でも龍太郎に邪魔されて言えなかったんだっけ、思い出してくる。ああ、じゃあ私は名前を叫んだのか。
私がきょとんとしてると、サングラスの奥でぱちくりしてる青。
「昨日は僕の事、さん付けじゃなくって悟って呼んだろ?
敬称略で悟って呼んでよ、キミの事、僕はハルカって呼んでいるんだしね。だから僕の事名前で呼んでくれる程度に気軽だと良いなぁ。
キミは生徒じゃないし上司と部下でもない。仮でも恋人だし実際お嬢様でもそこまで箱入り娘って性格じゃない……ちょっとヤンキーかぶれを匂わせる子からさん付けされてもさ~」
前半はなるほど、と思う言葉だったのに、言葉の終わりはイラッとした。そんなにヤンキーかぶれだろうか…?父親がああだからなんじゃないのかなぁ。
私はむすっ、として悟を指差した。
『後半、そういう所。そういう所が女の子に逃げられるんだよ?
それにここに居るだけの間でしょ、その……有名な所の現当主を呼び捨てにすんのもどうかと…』
けじめ的な。悟の歳は私とタメかちょっと上か…そう変わらなさそうな、結構若めの顔つきだけれど。
眉間にシワを寄せ、口を尖らせる悪…いや、糞餓鬼モードになる悟クン。
「キミもズバッと結構言うよね~」
『そうかな~?自分、絶滅危惧種なんでズバッと言ってるだなんてわかんないかな~?絶滅危惧種だとか言ってる人にさあ、ズバッとなんて、』
「ギャロップ」
突然真面目な顔をした悟に返された単語に、私はとある歌が脳裏をよぎった。
それは次に続く単語をリズムに乗せて流していく記憶。私はギャロップに続く単語を口にした。
『さ、サンダース?』
「メノクラ『ポケモン言ってる場合じゃないと思うけど?』ちぇー、しょうがないなぁ…」
カチャ、とサングラスを取る悟。
ふん、と鼻で笑って私の肩にぱす、と軽く手を置いた。自身の造形を自覚しているからの笑みを浮かべている。