第2章 視界から呪いへの鎹
「真面目に言うとね、ぶっちゃけ禪院家って、呪術の有無とか男尊女卑にものっすごいうるさいんだよねー。それで女が産まれたら扱いが酷いんだ。
で、春日の一族の始まりがね、禪院の妾の産んだ子孫…女らしいよ」
『妾……、まあ…』
どうやら私のご先祖は、禪院家の本妻以外の女性との子からが始まりらしい。
「それで、その女が呪術を持っていても禪院家は相手してくれないってね。禪院家の対応に激昂してねー、女系の血脈が始まったんだって。その初代は"かすがい"って名前。それが春日の名字の始まり。
ハルカは知ってる?鎹って。カタカナのコの字のやつなんだけれど」
こういうやつ、と言いながら両人差し指でホッチキスやハードルの形を空に書いてる悟。私は頷く、しばらくホームセンター居たからそういうのの品出ししたし、棚卸しの時工具関係は多すぎたり混在してだいぶ腹立ったし。
『材木同士を繋げたりするアレでしょ、ウッドデッキとかにもあったりする…』
「そうそう、それ。その始まりの女性の、禪院家への"自分達の末代に至るまで呪う"って恨みで血族がキミへと続いてるみたいね。
呪いは呪いでしか祓えない、その祓う呪いに対しての呪いって黒魔術に近いものだよ。結構ねちっこいねえ…春日家」
『先祖とはいえだいぶ執拗かもねぇ……』
「ねー、メンヘラだよねー」
『ねー』
「最後までたっぷりメンヘラだねー」
フレンドリーかつ失礼な対応か。
かなり執拗であるけれど。男尊女卑なら女系に絞ってとことん恨んでいる、いや呪っている。
ここにはお墓がずらりと並んでる。肉体のない先祖が変に反応してしまったらどうしよう。呪いが見えるなら、先祖も漂っているかもしれない。
『あのー…庭にご先祖のお墓ございますが?呪いの他、幽霊的なものが存在するならマイルドにしようよ、』
この場から見えない位置、本棚より先を指先でちょいちょいと指す。昨日見た、たくさんの先祖と私も予約されている墓だ。
「やっべ、僕らの秘密にしとこうぜ、シー」
『ん……シー、で』
しーっと悪餓鬼の如くはしゃいでいる。呪いがあるなら、幽霊とかもいるかもしれないから、聞かれてたら御三家のうち2つの家系を呪い始めるかもしれない(別に生きている私が呪う訳じゃないけれど)