第2章 視界から呪いへの鎹
眠いけれど、このままぐーすか寝てたらまた危機感無いよ!って言われそう。ああは言ったけれど、龍太郎が襲いに来るかもしれないし。寝ている内に仕込まれる事もあるかも知れない。
しかしまさか祖母がそういう事させる人だったなんて…。表面上の怖い、じゃなくて中身まで怖い。
襖の外からトットット、と足音が聞こえる。浴室の事もあったからドキドキしながら、悟である事を祈り襖を見た。
サア、と開かれた襖。身長の都合で少し屈んで入ってくる、白髪の人。
入ってくるなり、あっ!と嫌な顔をしてる。その驚く理由は分かるけれど…。
「せっかくくっつけたのになんで離してんの?」
『………好感度不足?ポイントが足りないからこうなってる』
「好感度、不足……今は何ポイント?」
なんだっけ、路上で40ポイントくらいって言ってたっけ。
正確に計算はしていないけれど。
『60くらい?』
「結構高いんだね、助けた事で意外と好感度上がってる?」
『アッ50くらい』
「どうしてすぐに下げんの~?」
なんだか、このやりとりは面白いんだけれどなぁ。頬を膨らませている男にふふふ、とちょっと笑ってしまった。
もう、部屋に戻ってきてるしひとりじゃないから襲われる可能性も低いはず。眠っても良いでしょ。
もぞもぞと、布団を捲り両脚を潜り込ませる。
『……私は、たった一体でも手こずったのに対処できない数が向こうから…呪い側から寄ってくる。祖母は私に血を残せと龍太郎に命令してる……呪いだとか、呪力だとかそういうものを知ってしまったから、きっと私は今までの生活には戻れない。
悟さん、私はどうすれば良いのかなぁ…、』
明日からどうするのかを知りたかった。
じっとこちらを見ていた悟はふっと笑って親指を立てる。
「ハルカが呪術をなんとなく閃いたり、この屋敷内の書物とか読み漁ったり、僕の伝手の呪力の込められた武器を持ってみたりすれば良いさ」
『…そういう閃きなの?呪術って』
悟は手を下ろし、指先でスイッチを指差す。電気消して、と。
渋々布団から出て、電気を消してまた布団に潜り込む。障子からの月明かりだけでもこの室内が明るく見えた。その状態で私の質問の答えが続けられていく。