第9章 五条求婚する
呪霊は下から掘っていたのか。エントランスの下は空間がありフッ…とした瞬時の浮遊感。きっとずっと下のワイン倉庫からまっすぐに掘り進めていたな、あの手のやつは。そのままに私は落下を始めていた。
でも、パンダが私の代わりに攻撃していたおかげで私は反転術式を出していたから、なんとか"怒髪天"であちこちの壁や床に式髪を突き刺して落下は防げた。ずっと遠い天井にもピンと張ってるからそこまで届いたみたいだ。
ガラガラッ、とますます瓦礫が落ちて穴が大きくなっている中での出来事。先輩方の靴が私の視線の位置だった。
不幸中の幸い、とはこの事だろうな。フゥー…っと大きなため息を吐いて上を見上げる。
覗き込む3人も安心した表情になっていた。
『地図に合った地下倉庫に落ちてったみたいですね、私を掴んでた呪霊』
もうカウンターで燃やす炎の明かりは無い。パンダがカチ、と音を出して照らしてる。
「おかか…」
「そうだよなー、お前はトラブルメーカーだろ。ピンポイントで狙われすぎてそりゃあ囮適性率100%だわ!」
『お、お褒めに預かり光栄です?』
「褒めてねーよ?」
今のにトラブルメーカーって単語含まれていたのか?と疑問に思いながら、落ちかけた勢いが死にきれていない揺れる私の体。
「さっさと足を回復しとけ、回復が終わり次第引き上げる。階段の方向を見てくるから、パンダと棘は後輩をしっかり見張っとけ」
『はい、了解です』
ふーっ、とため息をつく狗巻と周囲を見渡し、先の見えない穴の先を見ているパンダ。
私は足を回復し始める。
そう言えばさっきのパンダの攻撃に怯んで呪霊は落ちてる。今落ちたらたったひとりで立ち向かう事になる。
ぶらぶらと白い糸やロープのような怒髪天にぶら下がり、自身の胸から下が視界に入る瓦礫のおよそ2メートル程の幅の大きな穴を覗き込む。きっともっと下に地下室がある。見えないけれど…。
ぶらぶら。ぶらぶら…。2人の先輩達が照らす中で自身の治療をしている。足からミチミチと式髪を消費して治療してる感覚。
その治療中、両手が塞がる中で周囲を見渡したらふと視界に入るもの。自身のウエストポーチだ。