第9章 五条求婚する
考えられるのはさっきの建物を揺らすほどの衝撃。それで建物が崩壊するか…。けれどその音は一度鳴ったきり。
「ふー…!とりあえず祓いきれたぜー…疲れた!」
「……じゃげ」
音の異変に気が付いたのは私と真希。
パンダはやっと最後の呪霊を倒しきった所で狗巻は突き当りから合流したばかり。その声の枯れ具合から私は肩に手を置き、すぐに離した。よし、これで治ってるはず。
ド……っ…ミシ、……パキ
またか。また建物がミシミシいってる。
建物がぐらつき、揺れながらも確実に近付く気配がする。響くような大きな存在感。場所ははっきりとは分からずとも自分たちの立っている場所よりも下の方とだけ分かる。
ただの崩壊じゃない、呪霊の仕業だ。
チッ、と舌打ちをした真希は下を見渡した。
「棘が祓ったヤツじゃねぇのかよ」
「おかか、めんたいこ」
「そっか、それは祓いきったか。ところでよー、調査報告書の殺人ってさ、無理心中だろ?」
ドォン…という地響きにそれぞれが構える中で、パンダは周囲を警戒しながら足元を頻度多めに照らして調査報告書の内容をおさらいし始めた。
私も足元を照らしながら周囲を確認してる。頭上からぱらぱらと細かい砂埃が降ってきて、一度くしゃみをしてしまう程に、建物の状況は良くない。
『この建物で女性が監禁のち殺害されたんですよね?』
「ああ、それで犯人の男は死にきれずに後日別の場所で死んでる。殺めた女には相当執着してたみたいだという事はだ」
ドォン、という響きはまるで和太鼓のような、回復したての腹部に響く。
『"どうして私なのよ"……そうさっきの呪霊は言ってたし。さっき狗巻先輩が祓ったのは、女性が元になった呪霊かと……』
バキッ、という音が私達のすぐ近くで聴こえた、そんな気がした。