第8章 スキルアップ
「お腹いっぱいな所悪いけれど次はデザートに行こうか?アフタヌーンティーセットとかさ、するでしょ?」
『それってもしかして…あの段々重ねの…アレっすか?』
3段ほどの芸術的なタワーを想像する。
下段にサンドウィッチ、間にスコーンやキッシュ、そして上段にはケーキやタルト…!
お寿司を食べた後ではあるけれど、それを聞くとさっきのが軽食に思えてきた。そういえば悟、お寿司私より軽めに食べてた。つまりは始めからアフタヌーンティー行くから調整してた?
まってこの人太らせようとしてないか?食べちゃいそうだぞ、アフタヌーンティー!
『…それから結構な量で攻めてくるアレではないです?』
「そう!段々のアレだねー、今の時期のデザートは何になるんだろうねっ!僕お寿司控えめにしたからメインはアフタヌーンティーなのさ!」
『そういう所ー!』
計画してらっしゃった!この人!
左右を行き交う車が無くなっていく。そろそろ信号が変わる頃だと、歩道前で立ち止まった人達が歩行者信号を見上げている中で私達は互いを見合っていた。
「でもさ、アフタヌーンティーって皆憧れるでしょ?試しに今回行ってさ、どれくらいの量かを見極めてから次回また挑めば良いさ」
『じゃあまたさっきのお寿司屋みたいに悟と来られる?』
にっ!と笑う笑顔は眩しくもちろん!と元気に返事が返ってきた。
それは今回一回きりの特別じゃなくて、再度ある特別。また来られる事、今から行く場所にもまた行けるという事に嬉しくなってきて少しだけ手を握る力を増す。
「ほら、青になったから行こう行こう!
あっ、ヌンティー終わってぶらぶらしたら新作のフラペチーノ飲もー!」
『……よく腹に入るなぁ』
青になった歩行者信号。手を繋いで、互いの腕が触れ合って。外の空気でリセットされる度に時々悟の香りを感じてドキドキとして。
……ふふ、デートってこんなにも楽しいんだな。なんてとても満喫していたのだけれど。
****
「着いたねー」
『(着いてしまった……)』
少しだけ暗くなってきた空の下、来るべき所に来てしまったというか。休憩とか宿泊とか書かれた看板を見て悟に手を引かれて居る私はこれまでの楽しい気持ちが吹っ飛んでしまった。