第8章 スキルアップ
「なーにやってんの、ほら行くよ!責めるほどじゃない遅刻なんてしてさー」
『どの口が言う、どの口が……』
少し口を尖らせつつも締め終えた鍵をバッグにしまいこんで悟の前でまじまじと見た。
こういう時くらいしか私には言えない、いつも思っていたとしても。
『……今日の悟、格好良いね?』
「今日っていうか、今日"も"でしょー?まっ!ファッション界の天才とも言われる五条悟だからさー…
そういうハルカだってそんなに可愛くしちゃってどうしたの?しっかりと気合入れてくれてさ。似合ってるよ!可愛らしくていつもよりも見惚れちゃうんだけれど?
それから……いい匂いもするね?今すぐ食べてやろうか?」
『……っ!』
耳元で呟かれて、数歩下がると悟はにぱっ!と明るく笑った。
「──なーんてねっ!まだ食べるには早いもんね!
でも今日のハルカすっごく良いよ?流石僕の選んだ恋人だよね、僕の着眼点優秀すぎない?」
自慢気に話して、私をじっと見つめながら悟は手を差し出す。
この人は褒め殺しするつもりか。私は下がった分近付く。
高専敷地内から手を繋いで行くのか…少し恥ずかしいな、と悟の手に…指を絡めるように手を繋いだ。ちょっと満足げな悟は一歩踏み出したので私も歩む。大きくて暖かい手がリードする一歩目。不安も緊張も少しずつ安心感に溶けていく。
『……悟とのデートだからね、ちゃんとこういう所は私だって気を使いますよって。
ありがと、褒めてくれて』
普段素直になりにくい分素直になれる時はなっておこう、と誰も居ない前方を見やりながら進めば隣でカシャカシャと音を鳴らしてる。許可取ってよ、半目とかだったらどうすんのさ。
「やば、今日のハルカは天使か…?待受にしよーっと!」
『恥ずかしいからやめれ』
手の届かない位置で設定し終えた悟は携帯をしまって"何が食べたい?"と今日のデートプランを話し合っていった。
****
「彼女におまかせされたからには、この天才呪術師五条悟…一肌も二肌も脱がせていただきます!
…という訳でお昼はお寿司予約しといたよー」
『ランチに寿司?』
りっぱ寿司か?だったら予約要らないか。するとこの前のちらし寿司専門店みたいな所かな?
きょとんとしながら半歩早い悟のおすすめの店舗へと向かっている。