第8章 スキルアップ
目の前ではファスナーを開け、3個目のおにぎりがはむはむと口の中に消えていってる。食べるのが早い。
狗巻が使うのは呪言って聞いているけれど、口周りに何か術式のようなものが掘られて居るんだな…。
目の前の狗巻イリュージョンに驚いていれば、さっきの私の挙動がおかしかったのだろう、真希はにんまりと笑い私の肩に腕を回す。
「おい、ハルカ。さっきの色さ…私物のラッピングって言ってたけどどうせ悟に好みの下着の色でも聞いてたんだろ?」
『……フグッッ!!?』
ご飯粒が気管に入った!乱暴にも箸をトレイに置き片手を口元に当てて机下を向いてげほげほと咽る。
肩に回された真希の腕は今や私の背を強めに擦っていた。
「いや……そこまでいい反応するとは思ってなくってな、うん…食ってる時に悪かった……」
「図星かよ、仲が宜しいようで。まああの悟だからな手を出さない訳が無いだろうしな!」
「しゃけ、しゃけ!」
咳き込み過ぎて涙目になりつつも水を飲んで喉の調子を整えた。
そして私の隣をそろりと見る。にっこにこだ。
「で?関係的にどこまで行ってる?」
『……ノーコメントでいひゃいっ!何故!?』
ガタッ!と狗巻が腕を机に前のめりに立ちあがり、パンダはまるで笹食ってる場合じゃねえっ!のポーズに見えなくもない前のめり方をしてる。
これは次に頬を抓るのは俺か?という姿勢なのが黙ってても伺えますわ。
私は恐怖した、この先輩ズに。沈黙させてくれ。黙秘権をどうか私に下さい。
周辺の席は所々空いているもやはりお昼時。私達の会話は雑踏の中でかき消されるのだけれど。
「で?」
真希の追撃が始まった。まあ始まったといっても答えるつもりはないから、私はぼかすことにした。だってしっかりしっぽりヤッてますだなんて言えないじゃない。
『……ラッピングを買うという事は…"そういう事"ですいっひゃぁい!?ナンデ?答えたのにナンデ!?』
「おかか…」
「遠回しに言うなよなー」
『察してちゃんじゃないけど、流石にこればかりは察してくださいよ……』
箸を手に取りちゃっちゃと食べてしまおう、食べたらそのまま車に戻って帰ろう。