第8章 スキルアップ
63.
たまには特に予定もなく久しぶりに部屋でごろごろしたい。そう思っていた休みがやって来た……のだけれど急遽買い出しで予定が埋まってしまった。
あまり運転は得意ではないけれど、高専の使用されていない車を借りて買い物に出掛ける。悟は今日は任務らしく散歩に行きたくない犬みたいな顔をして何度も振り返りながら私の部屋から隣の部屋に戻っていった。しっぽが生えていたとしたら垂れ下げていただろうに。特級呪術師は休みも潰れて大変だな、と悟には手を振ったけれど。
そもそも悟はなんで自分の部屋で過ごさないんだ。高専の寮広めだけれどさ、ほぼほぼ私の部屋で過ごしてるせいで色々と消耗する。バイト時代なら今の生活、やりくり出来たか怪しい所だ。でも、高専は学生にも任務の度にお給料出るし、私に至っては治療するという立場もあるからちょっと金銭面では恵まれている。多忙だけれど…。
寮母がいるとは言え、自分の事は自分で出来るから結局は頼っていない。そのせいで悟と同棲(というか始めから壁抜かれてるし)してる日々なのだけれど……今日は別に出かける訳じゃなかったのに、台所洗剤やトイレットペーパーが少ないって事に気が付いて急遽買い出しに出ようとしたわけだ。
トイレットペーパーやティッシュ自体が大きくかさばる。反転術式で自身に縛り付ける様に荷物を複数持つことも出来るけれど普通の人から見たら"何あの塊魂…?"ってなるのが見えてる。だいたい春日の一族の若い生き残りだって事もあるから電車とかその辺とことこ歩いてたらヤバイのは分かる。その為の車移動だ。
車なら文句も無いでしょ、とエンジンを掛け、携帯で悟に一応メッセージを送る。
"消耗品とか食材とか色々足りないから、車借りて買い出し行ってくる"……うん、連絡も入れたから良いでしょ。頼んで買ってきてくれる保証がないし、自分で行くに限る。
車を走らせ、高専敷地内から買い物へと向かう。
兄貴ん家の方は田舎だから凄く走りやすかったのにこっちは人が多くなるほどに走りづらいし駐車場問題がある。ショッピングモールに駐車するのに駐車料金そんなに取るのかよ、と思いながらも食料品以外の必要なものを買っていった。食べ物は最後にして必要なものやちょっとお店をぶらぶらとしたかったし。