第8章 スキルアップ
こいつはわざわざ買ってきてやってない?悪戯に命かけてんの?悟はさぁ…。手のひらのひとつのヘアゴムを取ればクリアピンクの丸い玉にラメが封じ込められたピンクのヘアゴム。
残り4つも青だとかオレンジだとか可愛らしい見た目だけれど、成人がするヘアゴムじゃない。小学校低学年までが許されるレベル。
『……これは仕返ししないとですねえ…』
「ははは、まあ…そういう悪戯はしても心配してたのは確かだからな。連絡はしとけよ?あいつは連絡しないとしつこく付き纏うぞ?」
ぐう、という腹部からの代わりの返事に、家入も私も視線が腹に行く。
……夕飯も朝食も取ってないのだからこれは仕方ない。
『ご飯食べたらにしますわ…トイレも行きたいし、シャワーも浴びたいし』
「そうだな…、五条よりもそっちが優先だ」
笑いを堪える(堪えきれてない)家入に頭を下げて私は寮へと戻っていった。
****
トイレに行って、鍋焼きうどんを作って食べて、掃除洗濯とシャワーを済ませて。
急いでしたのは良いけれど、それらを優先的にしていたら携帯を弄る時間なんてなくって。出かけるギリギリまで充電するつもりの携帯を操作する。
今更起きましただとか送ってもなぁ……、とりあえずLINEの1年グループに午後から出ますと連絡を入れて、悟とのやり取り欄で手が止まる。
心配掛けてごめんとかかな…、と考える中で洗濯を終了した音。
慌ただしく洗濯物を干し始めると結局は悟に連絡することが出来なかった。
寮から出て校舎へと足を運んで教室前まで来た。昨日は疲れたけれどめちゃくちゃぐっすり眠って、さっき食事も済ませたから元気だ。
ガラ、と開け私は片手を上げた。
『おそようございますー』
「おーう、昨日はお疲れー」
「フライドチキンは食べられた?倒れる前に言ってたけどっ!」
『そんな事言ってたのか、私は…』
同じく虎杖が手を上げて挨拶をして、釘崎も片手を上げた。
3人に気を取られて居たけれど、教卓側からものすごい存在感を感じる。まだ昼とはいえなんでここに居るんだろう?
私は嫌な予感がしたので教室に踏み入れた足を引っ込めて"お邪魔しました"とドアを急いで閉めた。
教室内、ドタドタといつものアイマスクの悟がドアを開けようとしてる。ガラス越しにキレてそうな悟がこっちを見ていた。